「指切りげんまん」は本当に指を切断していた! 驚きの風習や言い伝え

公開日:2013/1/13

 「夜にツメを切ってはいけないよ。親の死に目に会えなくなるから」

 小さい頃、おばあちゃんからこんな注意をされた人は少なくないはずだ。古くから日本に伝わる風習・言い伝えにはいったいどんなルーツがあるのか。最近、その謎を解き明かした『知れば恐ろしい日本人の風習』(千葉公慈/河出書房新社)という本が発売されたのだが、これを読むと、言い伝えや風習には予想以上に恐ろしい真相が隠されていることがよくわかる。

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 たとえば、「指切りげんまん」。これはもともと江戸の遊郭で流行ったもので、誓いの証として、男女互いの小指を切断し贈り合っていたことがはじまりだという。それが「約束守る」という意味に変化して大衆にひろまったのだそうだ。そう、比喩でなく、本当に指を切っていたというのである。これには任侠ヤクザの方々もビックリだろう。
「夜に口笛を吹いてはならない」なんて言い伝えも、恐い。というのも、古くは口笛を「嘯き(うそぶき)」と呼ばれ、その音は神や精霊を招く力があると信じられていたらしい。また、夜は昨日という時間が死に、明日という時間が生まれる、いわば生死の境界線でもあり、そんなときに口笛を吹くことは神霊的存在を呼ぶことであると考えられてきたのだという。

 「花いちもんめ」の真相も恐ろしいかぎりだ。この歌は、花の売り買いをする様子を歌ったものであるという解釈が一般的だが、じつは人間の売り買いの様子を描いた歌という説もあるという。口減らしのために子どもたちを売ることが普通に行われていた時代、「花」というのは若い女性の隠語であり、歌詞にある「勝ってうれしい」「負けてくやしい」は「買ってうれしい」「(値段を)まけられてくやしい」という意味が含まれていたのではないか、というのだ。

 もっとも一方で「恐ろしい」とはちょっとちがう印象をもってしまう風習もある。冒頭にあげた「夜にツメを切ってはいけない」もそのひとつ。この言い伝え、同書によると、戦国時代に、夜間の城の警備をする役目の「世詰め」からきているらしい。戦国の世では、この役目は親が亡くなってもその場をはなれることはできない重要なものだった。そんな「世詰め」と「夜爪」の語呂あわせから、親の死に目にあえないといわれるようになったのだとか。また、江戸時代に盛んになった儒教の教えでは、ツメも親からの大事な贈り物だから、ろくな照明もない暗闇で粗末に扱うことは、親不孝。それが現代まで伝わったのではないかと書かれている。

 どんなおどろどろしい背景があるのかと思っていたら、ダジャレと深爪注意。ちょっと拍子抜けする話だが、ようするに、一口に風習や言い伝えと言ってもいろんなパターンがあるということだ。古代がら続く宗教的な禁忌、近世の流行からの派生、庶民が貧困の恨みをこめてつくりだしたもの……。

 これら言い伝えの中には、ネットが発達した今の時代にも語り継がれ、生活に影響を与えているものがある。鼻で笑うのでもなく、かといって鵜呑みをするのでもなく、ひとつひとつのルーツを検証して信じるかどうかを自分で判断することが大事かもしれない。