女性のエロスを引き出す、マニアックで凄みのある3冊

文芸・カルチャー

更新日:2017/11/25

 2010年、存命中のSM・官能作家、団鬼六の賛同を受けて創刊した文芸誌『悦』。

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『悦』が主催する官能小説文学賞が「団鬼六賞」だ。常識やルールに縛られない恋愛小説や妄想力に溢れた情愛小説で新たな官能小説の可能性を希求している。

 第1回大賞に花房観音、第2回にうかみ綾乃、第1回優秀作には深志美由紀と、これまでの受賞者は女性が多く、デビュー後もその活躍は目覚しい。

ダ・ヴィンチ』2月号の「オトナ女子が読みたいエロ系文庫」特集では、『悦』編集長の松村由貴が“女性のエロスを引き出す”とっておきの3冊を紹介している。

 ――編集部が王道&入門的な作品を紹介したので(『ダ・ヴィンチ』2月号ではほかにも官能的な文芸文庫を紹介している)、私はマニアックで凄みのある3冊をご紹介。『ロベルトは今夜』は、本来的な意味での“耽美”文学。直接的な表現の裏に、性に対しての思想と哲学が隠されており、性的なものが恥ずかしいと思う人にも入りやすい一冊です。山口椿氏は、三島由紀夫と交流があるなど、玄人受けする謎の芸術家。映像の浮かんでくるあられもない表現が美しい。『次々と、性懲りもなく』は、女性の性的欲望をそのまま書くことに格闘してきた著者、渾身の一作。文章力、構成力、それに裏打ちされるリアリティ、さらに官能小説特有の言語表現の豊富さも読みどころ。性に対して、積極的な女性におすすめ。

 一方『悦楽園』は性的冒険に消極的な方に。基本的には女性が犯されていく話ですが、あくまでもレイプではなく、女性が秘めている被虐性を巧みに引き出し、一種の“汚す”感覚、筆致がカタルシスを呼んでいきます。著者はまだ新人ながら、すでにマニアックな女性読者を掴み始めています。
 3冊はどれも女性目線。エロティック文芸の本質を照射する逸品揃いです。――取材・文=河村道子

■『ロベルトは今夜 山口椿 エロティシズム・コレクション①』山口 椿 祥伝社文庫 
■『次々と、性懲りもなく』菅野温子 マガジンハウス文庫
■『悦楽園』瀬井 隆 無双舎悦の森文庫 

(『ダ・ヴィンチ』2月号「文庫ダ・ヴィンチ」より)