「逆らわず ただうなずいて 従わず」、『女子会川柳』に見るOLの生きる道

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更新日:2014/2/19

「腐っても 使えなくても 正社員」

 こんなスパイシーな川柳を読んだのは、会社という荒波に揉まれているOLたち。彼女たちの鋭い観察眼によって生みだされた作品をまとめたのが、『女子会川柳』(ポプラ社)である。

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 これは、フリーペーパー『シティリビング』の「シティOL川柳大賞」(1997年にスタート)に集まった6万5000句の中から、88作を厳選したもの。『シティリビング』は企業に届けられる情報誌で、読者はほぼOLと呼ばれる女性たち。編集部のデータによると、読者の平均年齢は34.5歳で、未婚者は61.5%。読者の平均年齢はこの20年で10歳以上アップしたのだとか。

 キャリアと年齢を重ね、いろんな立場を経験した読者が生みだす川柳は、世相が反映されているものが多く、現代OLが歩む道筋が見えてくる。

 まずはOLを取り巻く状況の変化を詠った「入社時は 腰かけ今は 命がけ」「派遣社員 有能すぎると 立場無し」。“腰かけOL”という言葉が生きていたのも遠い昔。正規雇用といえどもいつリストラの対象になるかわからず、派遣社員に持ち場を獲られないか必死なのだ。一方で女性が管理職になるケースも多く、「うちの部下 見ざる聞かざる 気が利かず」と“ヒラ”時代とは異なる新たな悩みに頭を抱える人も。

 クスリと笑ってしまうのは、お局化する自分に対する悲哀を表した作品。「十年目 部長が席まで 来てくれる」「きつくなる 目つき性格 腹まわり」。仕事をしゃにむに頑張ってきた副産物として、望まずとも貫禄を手に入れてしまったOLたち。しまいには、部長まで動かす“大物”に。「ああならない 自信はあるが 自覚なし」とかつては上司や先輩に反発していたのに、今や同じ穴の狢になってしまった!?

 同期がみな結婚退職もせずにお局化状態だと、「適齢期 感じなくなる このオフィス」となってしまう。気がつけば「できちゃった 結婚でいいと 親が言う」ほどに、まったく男性の影がない生活に。社内恋愛は望めないと積極的に出会いを求めても、好みの男性はすでに結婚していたり“当たり”にはなかなか出会えず、「やっぱりね 残りものには 訳がある」を実感するだけで、「合コンで 仲良くなるは 女子ばかり」。それでも「お局の 電撃婚に 希望わく」と今日もせっせと定時に仕事を終わらせ、“いざ出陣”するのだろう。

 OLの主な戦場であるオフィス内も問題は山積。「『常識よ!』 言ってるあなたが 非常識」「『至急でね!』 頼んだおまえが なぜ帰る」。いろんなタイプの人間が集まる会社という組織において、マイルールを貫き通す人にチクリ。それに対して表立って噛みつくようではまだまだ青二才。10年以上、オフィスで自分の居場所を守ってきたOLたちは、うまくやり過ごす処世術を身につけている。それを表しているのが、こちらの作品。

「逆らわず ただうなずいて 従わず」。

 仕事内容や会社の人間関係にまったく不満はない、と言う人は少ないだろう。多くの人がなんらかのストレスを感じながら働いている。しかし、実はそのストレスこそがネタの宝庫。心の中でひとり川柳を詠めば、状況を客観視でき、処世術が見つけられるかもしれない。