不幸体質の女子につい惹かれてしまうのは、なぜ?

更新日:2013/1/23

  マンガやラノベの中には、周囲に災いをもたらしてしまうヒロインがたくさんいる。

 1月10日に発売された『斉藤アリスは有害です。~世界の行方を握る少女~』(中維:著、GAN:イラスト/アスキー・メディアワークス)では、国に有害者と認定された高校生・斉藤アリスが登場する。歩けば曇天、すれ違ったら人も車も関係なく転倒、横転。さらには、彼女の特番を組んだテレビ局が潰れてしまったほど。『貧乏神が!』(助野嘉昭/集英社)の桜 市子は、周りの幸福を吸いとってしまうし、超静電気体質の少女・鳴神響子が登場するのは『100万ボルトの彼女』(楯山ヒロコ/竹書房)。普通ならできるだけ関わりたくないと思いそうなものだが、実は彼女たちを好きだと言う人は意外と多い。それは一体なぜなのか?

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 まず1つは、彼女たちに近づくことで秘められた一面をのぞけるということ。なぜだかわからないけど、謎の多いミステリアスな人に惹かれるという人は少なくない。そして、周りから疎まれたり避けられてきた彼女たちは、まさに謎に包まれた存在。ミステリアスな人に惹かれる人は、自分だけが知っている彼女。それを暴きたい。自分が“特別”になりたいから。また、笑顔がかわいいとか、編み物が得意。意外と寂しがりや。そんな一面を垣間見て、普段とのギャップにより萌えるのだろう。

 そして、コミュニケーションが下手な彼女たちが不器用ながらも一生懸命周りの人と関わろうとする姿は、見ていて思わず応援したくなる。普段から人に疎まれている彼女たちだが、アリスのように中学時代を家の中だけで過ごしたり、市子のように幼い頃両親を亡くしたならなおさら人との接し方がわからなくなるはず。

 アリスが授業で当てられたときに黙っているのは、怒りの前兆ではなくテンパっているだけ。学校で徹底的に無表情で笑わなかったのは、緊張していたから。話しかける相手もいなかったから、最初は別れ際に「またな」と言われてもなんて返せばいいのかわからなかった。でも、接していくうちに徐々に笑ったり、自分から「またね」と言うようになる。

 市子は、たった1人の家族のようだった執事・諏訪野の幸運を吸い取ってしまったことを知り、自分の傍にいると不幸になると思ってクビにしてしまう。それに、小学生の頃にイジメにあい、それ以来友達を作ることができずに高飛車で同性から嫌われる態度をとったりしていた。でも、だんだん自分の幸福を分け与えたり、「本当の友達」を作ることをためらわなくなる。

 触れると静電気とは思えないほどの電撃が流れてしまう響子は、ハグしたり、クラスメイトとスキンシップをとることができず、友達もできなかった。でも、高校生になってそんな彼女にも友達ができ、一緒に部活をしたり、誰かのために役に立ちたいと電気を使ったマッサージや得意の編み物で作ったぬいぐるみをプレゼントしたりしながら少しずつ距離を縮めていく。

 そして、彼女たちに惹かれる人はなんとかして力になりたいと思ってしまうのだろう。噂や能力ばかりが目立ってしまい、孤立してしまっているが、彼女たちはごく普通の女子高生なのだ。それなのに、周りが不幸になるからと自分のやりたいことも我慢し、できるだけ人と接しないようにしている健気な彼女たちを見ると、とても不憫に思えてくる。そんな内面を知ったら、どうにかして力になりたい。せめて自分だけは、彼女たちの友達でありたいと思うものだろう。

 彼女たちの周りにいると、確かに危険なこともあるかもしれない。でも、それは決して不幸とイコールではないのだ。それに気づきさえすれば、今まで見えていなかった彼女たちの魅力がわかるはず。