ネットの最強ビジネス? アダルトサイトの裏側

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更新日:2014/4/10

 経済の発展の裏側にはアダルト市場の力がある……とは、昔からよくいわれること。アダルトビデオの登場がビデオデッキの普及につながったことは有名だが、日本におけるインターネットの発展の裏側にも、成人向けアダルトサイトの存在が一役買っているかもしれない。というのも、アメリカの調査会社のデータによれば、世界のポルノ産業に対する日本の割合は21パーセントにものぼるといわれているため。世界のオンラインポルノの市場規模は約4000億円。そこから計算すると、日本国内のアダルトサイトの市場規模は約840億円に達するのではないかというのだ。

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 こうした興味深い数字が明かされているのは、『アダルトサイトの経済学』(沢田高士/幻冬舎)という本。実際にアダルトサイトを運営していた著者が、エロではなくお金をキーワードに、アダルトサイトの仕組みを明かした1冊だ。

 アダルトサイトといえば有料制がビジネスの主流のように思うが、本書によれば、いまアダルトサイトのほとんどは無料サイトで、有料サイトは非主流派であるという。もちろん、無料サイトの収入源は広告。以前は「決めた広告料で1ケ月間、広告する」月極め広告が多かったようだが、現在は「成果報酬タイプ」のアフィリエイトがメイン。著者の経験では、広告主の83パーセントは有料アダルトサイトであるそうだ。当然、アダルトのアフィリエイトは割がいい。一般のアフィリエイト報酬が売り上げの1〜3パーセントであるのに対し、アダルト・アフィリエイトの報酬は、だいたい売り上げの3分の1ほど。1件の報酬は「3000円程度」であるという。それでも「アダルト・アフィリエイトはだいたい、3万アクセスで1件の売上」というから、仮に日に4000アクセスを集めるサイトでも、月の収入は1万2000円となる。

 しかし、アダルトサイトビジネスにおけるポイントは、「継続報酬」というもの。これは有料サイトのアフィリエイト広告を掲載し、そのリンク先で有料会員になった人が出た場合、最初の新規報酬だけでなく、その人が1ヵ月で退会せずに会員を継続すれば、その報酬も支払われるという仕組みだ。有料サイトによって継続率に違いはあるが、「通常は25~40パーセント」が継続するという。多くはクレジットカード決済であるため、「わざわざ退会の手続きをとらない」のである。これにより、新規分とあわせて月3万円くらいの収入になるという。

 この収入が大きいと感じるかどうかは人によるかと思うが、アクセス数をのばすためにコンテンツを集め、はたまた記事を書き、SEO対策を講じ、頻繁に更新をしていくことを考えると、結構な手間がかかることは確かだ。さらには、現在は円高・ドル安の状態。広告主である有料アダルトサイトの中には「経営拠点を海外にしているところ」があるため、報酬も米ドルで支払われることがある。そのため、アダルトサイト運営者が「円高で悲鳴をあげている」というのだ。

 それでも、運営にハマる人はハマるというのが、アダルトサイトの運営。本書には、著者が出会ったというアダルトサイトの運営者たちの話も書かれているのだが、20代のサラリーマンに30代のカップル、50代と40代の夫婦など、「ごく普通」の人々だったそう。しかも、自分たちが撮影して楽しむ趣味を“小遣い稼ぎ”にしている感覚だったため、ビジネスとして本腰を入れるといった野心はまったく見られなかったという。これは過去の事例なので、いまもそのような人々が運営者であることは少ないかもしれないが、じつに趣味的な時代もあったようだ。また、以前、副業が禁止されている警察の警部補がアダルトサイトを運営し、広告収入を得ていたことから懲戒処分を受けた事例があったが、彼の場合は「はじめはブログに自宅で飼っていた小鳥(インコ)のネタを書いていた」とのこと。どうしてインコがアダルト画像に変化したのかは謎だが、こちらももしかすると、小遣い稼ぎ感覚だったのかもしれない。

 このほかにも、アダルトサイト運営の実践的ノウハウが多数紹介されている本書。アダルトサイトのカラクリを知りたいという人は、手にとってみてほしい。