通勤地獄をスマートに生き抜く「電車通勤士」って?

ビジネス

更新日:2013/2/1

 行き帰りの通勤ラッシュ。サラリーマンや学生にとって、苦痛な時間であることはいうまでもない。駅のホームに人があふれ、電車の中ではすし詰め状態。他人の息がかかるぐらいの至近距離で、見知らぬ人に体を密着させながら目的地までの時間を耐えなければならない。それだけ他人との距離が近ければ、他人の行動が気になり、当然諍いも起こる。たとえ当事者でなくても、そんな光景を目にするのはあまり気持ちのいいものではないだろう。それが朝のはじまりならば、なおさらだ。

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 まるで修行のようなこうした苦悶の時を軽減できる方法はないものだろうか? それを提示してくれるのが、『【図解】電車通勤の作法』(田中一郎/メディアファクトリー)だ。著者の田中氏は、往復平均4時間の電車通勤を28年間続けており、その経験から学んだメソッドが詰め込まれた1冊。満員電車の車内に体をねじ込む方法や車内での空間確保のしかた、「車内での理想的な立ち位置」を確保するための列への並び方など、通勤電車で起こるシチュエーションを丁寧に分析しており、その大真面目な独自の語り口にユーモアが感じられる。

 おもしろいのが、「やってはいけない動作」。車内で立っている時に、読んでいた本を閉じたり、窓から駅のホームをのぞいたり、携帯電話をしまったり…、そんな人を見ると思わず「降りるのかな?」と期待し、当てが外れてイラッとした経験がある人も多いのではないだろうか。本書では、それらは着席している人のマナーとして、してはいけない行動に分類している。「わかるわかる」と、思わずうなずいてしまう“あるある”が満載だ。

 「電車通勤士」――身も心も疲弊させない、スマートな乗車法を取得した人――田中氏によるこの造語には、そんな意味が込められている。“いかに満員電車でまわりの人に不快感を与えないか”、それが本書の題名である「作法」。ぜひとも多くの人が読み、通勤電車が少しでも快適になることを期待したい。

文=廣野順子(Office Ti+)