食品の安全性を判定する本、信じていいの?

食・料理

公開日:2013/2/8

 日常の生活と健康に直結する食品を中心とした日用品について、その安全性を問うことで世間に一石を投じた『買ってはいけない』(『週刊金曜日』編集部/金曜日)シリーズ。もとはと言えば、雑誌『週刊金曜日』(金曜日)の連載記事が単行本化されたのが始まりで、1999年頃に大きな話題となった。このシリーズが斬新だったのは、普段は見逃されがちな食品添加物等について詳しく言及し、問題とされる製品の実名を挙げて指摘しているところだ。また、製造元のメーカーにその見解を求めた取材をおこなうこともあり、そのやりとりを一部掲載している点なども他に例がないといえるだろう。その後、一時のブームは去った感はあるものの、現在もほぼ1年に1度のペースで新しい情報を加えた最新版が出続けている。昨年秋にも『新・買ってはいけない9』(渡辺雄二/金曜日)が発売された。

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著者の渡辺雄二は、科学ジャーナリストとして長年にわたりこの種の取材、執筆を続けている。『新・買ってはいけない9』以外にも、ほぼ同時期に『加工食品の危険度調べました』(三才ブックス)を出しており、こちらも対象となる製品の実名を挙げて指摘して評価するスタイルだ。

 『買ってはいけない』が最初に話題になった頃には、『「買ってはいけない」は買ってはいけない 』(夏目書房編集部/夏目書房)や『「買ってはいけない」は嘘である』(日垣 隆/文藝春秋)などの反論本も相次いで登場し、その信ぴょう性について激しい論争を繰り広げていた時期がある。たしかに当初の内容は、当時渡辺氏以外にも執筆していた共著者も含め、かなり感情的な書きぶりが目についた。『買ってはいけない』から個々の記事のタイトルを2、3例を挙げただけでも、「味の素」→「世界の食文化を侵す“白いインベーダー”」、「やまや辛子明太子」→「毒々しい不自然な赤い色」、「新ルル-A錠」→「カゼよりこわいカゼ薬」など、かなり過激なものがあった。そのあたりについては、シリーズ3冊目となる『新・買ってはいけない【2006】』(境野米子:著、渡辺雄二:著/金曜日)あたりから徐々に丸みを帯びた表現となってきており、当時指摘された科学的視点からの誤解や誤記についても増刷時や最新版の刊行時に改訂されるなど、変化を遂げているようだ。

ちなみに、『加工食品の危険度調べました』では主食系、調味料、飲料にいたるまで具体的な商品を名指しで写真付きで紹介、危険性の度合いを優良◎、良◯、可△、不可×の4段階に分けて判定・解説しており、優良な製品についても紹介している。

 また、製品名を名指しすること自体はインパクトがあるのだが、そのターゲットを常にトップシェアを誇る製品に置くスタンスであるため、よく読むと、「同種の他社製品にも含まれていることが多いので要注意」というニュアンスの内容も見受けられる。単純に掲載されている製品だけが「×」ではないこともあるのだ。そのあたり、読み手は注意が必要だろう。本の需要は今もある一方、その論法や指摘している食品添加物の毒性等の信ぴょう性についてはいまだに賛否両論あるようで、一般の読者にとっては「どこまで信じていいの?」と思ってしまう部分はありそうだ。

 だが、食品の安全性について消費者ひとりひとりが関心を持てるという点で、これらの本を一読する意味はあるだろう。なじみのある製品を例にとりながら、さまざまな食品添加物についての特徴やメーカーの情報開示の程度、国の基準の設置に対する考え方などを知ることができるからだ。単純に「指摘されている製品→危険→買わない」と鵜呑みにするのではなく、添加物の入門書ととらえるとよいかもしれない。

文=キビタキビオ
(ダ・ヴィンチ電子ナビより)