『ときめきトゥナイト』が好きだった30代女子必読のファンタジー

文芸・カルチャー

更新日:2017/11/25

 “今ここではないどこか”へ行きたい。それは、少女マンガに夢中になった女子に通ずる想いだったのではないだろうか。

 『ダ・ヴィンチ』3月号では、その気持ちを呼び覚ます「30代女子のためのマンガ100」を大特集。特に、別世界へと誘ってくれるおすすめファンタジー作品について、京都国際マンガミュージアム研究員の倉持佳代子が語っている。

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――自身も今年で30歳の倉持が「30代女子といえば、『りぼん』の黄金期の読者ですよね」とまずあげたのが、池野 恋『ときめきトゥナイト』

「1982年から10年以上連載したこの作品に熱中した人は多かったはず。陸奥A子さんらの“乙女ちっくマンガ”を継承しつつも、コメディの要素を加えたファンタジーです」

ほぼ同時期(87〜94年)に、『花とゆめ』では日渡早紀『ぼくの地球を守って』が大ヒット。

「“前世探し”をする若者が現れるなど社会現象にもなりました。今の30代女子がスピリチュアルな話題に興味がつきないのは、こうした作品の影響も大きいように思います」

 そして、80年代の終わりからは雑誌『ウィングス』が才能ある描き手をどっと輩出する。

「CLAMPさんが『聖伝―RGVEDA―』で登場した時は衝撃を受けました。キャラクターの心理描写や物語の展開の仕方ではなく、幻想的な世界観を圧倒的な画力で描いたのがすごかった! 種村有菜さんなど後進作家にも多大な影響を与えたと思います。80年代は、このCLAMPさんをはじめ、高河ゆんさ ん、なるしまゆりさんなど、同人誌を経て商業誌デビューする作家が登場し始める時期。そうした作家が多様なファンタジー作品を発表したという側面も見逃せません。

90年代には田村由美さんの壮大な架空戦記『BASARA』、由貴香織里さんのダークファンタジー『天使禁猟区』が登場。それと、端麗な画風で淡々と怖い話を描く波津彬子さん、今市子さんらのファンタジーは第二次オカルトブームの席巻を経験した30代女子を今もなお魅了する作品だと思います」――取材・文=門倉紫麻

「ファンタジーは、今ここではないどこかへ、手軽に連れていってくれるもの。厳しい現実を乗り越える術をも教えてくれるものだと思います」
と語る倉持。2000年代に登場した「大人がリアルタイムで楽しめる」現実ともリンクしたファンタジー作品や注目のマンガ家も紹介している。

『ダ・ヴィンチ』3月号「30代女子のためのマンガ100」より)