パナ、ソニー、シャープ……日本の家電メーカーは生き残れるのか

更新日:2013/2/13

 倒産の危機に襲われた日本の電機メーカーを描いたNHKのテレビ60年記念ドラマ『メイドインジャパン』が、今晩最終回を迎える。番組に登場するのは架空の大手家電メーカー「タクミ電機」だが、ネットでは「モデルはパナソニックでは?」「いやソニーに近い」「シャープにも似てる」と評判に。それだけ日本を代表する家電メーカーの各社がドラマのように窮地に立たされている証拠だろう。

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2月1日に発売された『日の丸家電の命運 パナソニック、ソニー、シャープは再生するか』(真壁昭夫/小学館)は、そんな“家電の失速”の原因を解き明かした1冊。たとえば、「2013年3月期の業績予測を、従来の500億円の黒字から7650億円の赤字へ大幅に下方修正すると発表」したパナソニックは、著者曰く「異常事態としかいいようがありません」というほどの危機状態だいう。その原因の大きなひとつは、「テレビ事業への巨額投資」。4800億円も投資して兵庫県尼崎市にプラズマ工場を建設したものの、液晶技術のコモディティ化(汎用品化)が進んだことでプラズマテレビのシェアは激減。さらにサムスンやLGといった韓国企業の勢力拡大と低価格競争が追い打ちをかけた格好だ。しかも、プラズマ一辺倒になったせいで、スマホやタブレットへの対応は後手後手に。同社の幹部も「これでは勝負になりません」と漏らすほどだ。

 しかし、パナソニックよりも深刻なのはソニーである。2012年6月4日には株価が32年ぶりに1000円割れの安値を記録したが、ソニーの問題点は、ずばり“夢を与えられなくなった”ことにあると著者は指摘する。家電事業だけでなく、音楽、ゲーム、保険、銀行というような「多角的な事業展開」が、結果として「技術重視」という企業文化を失わせてしまい、優秀な技術者たちは他社に流出。トランジスタラジオにウォークマン、トリニトロンテレビ、ハンディカムといった半歩先をいく画期的な製品を生み出していた“ソニースピリッツ”が、いまは消えてしまったといっても過言ではない状態だ。

 本書によれば、「土壇場に追い込まれている」シャープを含め、日本の家電メーカーの失敗点には共通することが多いという。そのひとつが、訴求力の高い製品を開発できなくなっているということ。アップルのiPodやiPhoneはもちろん、たとえばいま人気を集めるロボット掃除機のようなユニークな製品を海外メーカーが開発する一方、日本の家電メーカーがこぞって打ち出しているのは「エコ性能」。著者も「消費者が『エコ性能』をどれほど重視しているのか」と疑問を寄せているが、日本の製品にオリジナリティがなくなっているのはあきらかな事実だろう。

 「技術力を過信するあまり、顧客のニーズに応える商品を開発できなかった」……本書は厳しい指摘も数多いが、しかし、日本の家電メーカーは「生き残れる」とも主張している。「何がつくれるか」ではなく、「売れるものがつくれるかどうか」。アジアという巨大マーケットで、日本の家電メーカーは再生を果たせるのか。著者が警告するように、「残された時間は決して多くはない」のだ。