“改名”やゆるキャラだけじゃない! 拡大するまちおこしの手法

社会

更新日:2013/2/12

 プロモーションの設定上「うどん県」と改名した香川県や「桃太郎市」に改名した岡山市(後日、改名は鬼に取りつかれていたとして撤回)など、地方のユニークな試みに注目が集まっている。改名だけではなく、近年では「ゆるキャラ」や「B級グルメ」など、まちおこしの手法の幅が広がっている。実際にはどんな仕掛けがあるのか。『幸福な田舎のつくりかた』(金丸弘美/学芸出版社)から、知られざるまちおこしの成功例を見てみよう。

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 在来作物を使った料理で注目されたのは山形県鶴岡市。在来作物とは「ある地域で、世代を越えて、栽培者によって種苗の保存が続けられ、特定の用途に供されてきた作物」。山形大学の研究者と地元シェフが、在来作物の研究とそれ使った新しい料理が生み出し、メディアに登場するように。そして地元新聞社が研究成果をコラムとして連載することで、地元住民に在来作物を周知させ、高校生による“食の甲子園”が誕生するほど根付いたそう。今では県外から農家レストランなどに“ここにしかない”在来作物の料理を食べに訪れる人も多いのだとか。

小説家・有川 浩の『県庁おもてなし課』(角川書店)を起爆剤としたのは高知県。もともと同県観光特使に任命されていた有川。特使の仕事は「名刺を配ること」なのだが、待てども待てども名刺は来ない。その対応スピードをはじめ、民間と役所のズレを感じ、それを題材に執筆。名刺より小説を書いた方が県の認知度が上がるという考えも後押ししたのだとか。

 ユニークなのは、小説の内容と現実がリンクしているところ。小説にも書かれているが、観光特使の名刺の裏には県内の22の施設が書かれており、それを持って県外から来た人は5人まで施設の入場が無料になる。もともとファンの多い有川の作品ということもあり、利用率は7.4%という成績を残した。たしかに他にはないサービスだけに、利用したい・参加したいという意欲をかき立てたのかもしれない。

 人材活用が実を結んだのは、愛媛県今治市。ここはJAおちいまばりの「さいさいきて屋」という1軒の直売所が中心となっている。

 まず取りかかったのは、直売所に参加する農家の拡大。従来の、農協が農家から作物を集めて都市部に送るというシステムではこぼれてきた、小さな土地しかない農家や女性、兼業農家も参加しやすいシステムを導入したのだ。そのことによって直売所では、農作物はもちろん、お弁当や餅、饅頭など女性が得意な手間暇かけたものが人気を集めている。直売所の入口には、旬の野菜や魚を使ったメニューが掲げられたり、食べ方を教える専門スタッフがいたり、地元の人はもちろん観光客にもうれしいサービスが充実し、集客につながったという。さらには学校給食としても作物を納品し、子どもたち向けの農業講座を開くなど、地元食材のファンを増やすことにも成功している。
 これらの成功例は「ないもの探しから、あるもの磨き」「ユニークさで共感を呼ぶ」といった視点の切り替えが上手く作用している。その土地にある“宝”をどう生かし、付加価値をつけるのか。それがまちおこし成功の秘訣のようだ。