「30代女子、荒野に出よ!」西原理恵子が30代女子へ授ける処世術

暮らし

更新日:2013/2/20

 正論だけじゃ渡り歩けない世の中をどう生き抜くのか。波瀾万丈の人生で培ったあの手この手の処世術を伝授した人生相談本『生きる悪知恵』が22万部、体当たりで現場ルポを描いてきた人気シリーズ「できるかな」が累計83万部と売れに売れている西原さん。『ダ・ヴィンチ』3月号の「30代女子のためのマンガ100」特集で30代女子に向けて世渡り処世術を語っている。

advertisement

「30代の女性には仕事も恋愛もおかわりするくらいの勢いでやってほしいですね。白馬の王子とか一途な恋っていう脳内麻薬なんて、現場を渡り歩けば、バッチリ目が覚めてきますんで。荒野に出よ! なけなしのこん棒で、これぞと思った男の後頭部を殴って持ち帰れ! 正攻法しかいけないと思ってるのが若い娘さんのいけないところですよ。おいはぎのように後ろから行け!(笑)そうして小さな嘘のつき方、ダメな時の自分のあしらい方を覚えて、自分のトリセツを知っておくべきですね」

 そんな西原さんの原点が詰まっているのが「できるかな」シリーズ。週刊誌『SPA!』で連載がスタートしたのが1996年。記念すべき第1回が、当時ナトリウム漏れ事故を起こし、隠ぺい騒動で叩かれていた高速増殖炉もんじゅへの突撃だった。自作のガイガーカウンターで放射能を測るというもの。

 「まさか17年も続くなんてね。当時は、私も編集の新保さんも独身でまだ若くってね。しかもいきなり、もんじゅですから。今だったら原発リターンズで福島に行かないとって言ってるんですよ」

 盟友であり『できるかな』にもたびたび登場する新保さんいわく「女性であそこまでガチで体当たりのルポマンガをやる人はいませんよね。西原さんは腹のくくり方が違う。ネタの選び方もありきたりのことはやらないし、本音でぶつかっていくから。“このくらいのことじゃお客さんは満足しないだろう”っていう自分の中の要求水準がすごく高いんですよ。生きていく過程で培ってきたハングリー精神が常にあるから、自分で石炭をくべて走り続けてる。止まったら死んじゃう鮫みたいに」

 西原さんは言う。

「当時は『恨ミシュラン』もやってたし、何にでもかみつくし、どこにでも上がり込むから、狂犬と呼ばれてました(笑)。マンガ家でお笑いで現場ルポをやる人ってまだいなかったんで、それが自分を商品化する方法だって思ったんです。要はサルガドさんとヨネスケさんですよね。ふたりとも現場に行く人でしょ。サルガドさんは写真家として神様みたいな人だから批判するわけにいかないけど、真面目すぎて宗教画みたいなのよ。生きることって、もっとえげつないものでね。ヨネスケさんはそこを裏側から回ってベリベリはがすけど、愛があるんですよ。あの凶悪な顔で台所から上がり込んで喜ばれてるんだもの。日本一の不法侵入者ですよね(笑)。私もそういうマンガを描きたいなと。オバちゃんはひとんちに上がり込むスキル高いしね。世界中どこに行っても、オバちゃんの通訳が一番交渉力があるんですよ。おじさんが裸だろうと、若い娘さんが泣いてようとオバちゃんは“いいからいいから”で前に行くから。私もオバちゃんの背脂力で前に前に、どんどん前に、って思っています」

取材・文=瀧 晴巳
(『ダ・ヴィンチ』3月号「30代女子のためのマンガ100」より)