ネット上で騒動になった「虚構新聞」ってなに?

更新日:2013/2/20

 ネットで有名人の名前を検索すると、ニュースサイトがヒットすることも多い。つらつら読んで、「こんな騒動があったのか……」と初めて知ることもしばしば。しかし、よくよく考えてみると、それって本当なのか!? なんとなく信頼できそうなサイトだから情報を鵜呑みにしていることも多く、取材はしているのか? 情報ソースは? などと気にしはじめると、けっこう不確かな情報のようにも思えてくる。こうしたネットリテラシーをあざ笑うようにすべてウソのニュースのみで構成されたサイトが「虚構新聞」だ。

advertisement

 ためしに「ホリエモン 長野刑務所」と検索してみてほしい。きっとすぐに『ホリエモン、長野刑務所から脱走 圏外逃亡か』というショッキングな見出しが見つかるはずだ。これが虚構新聞のパロディニュース。1000字ほどの文章は新聞記事のように隙がなく、このサイトの存在を知らなければ、一瞬本気にしそうになる。「宇宙に逃走」という下りのあたりから、あれ!? 明らかにおかしいぞ……と大半の人は気づくわけだが、『橋下市長、市内の小中学生にツイッターを義務化』のパロディニュースにいたっては、事実と勘違いされ、流言飛語がTwitterに飛び交ったほど。「偏向したマスコミだけでない、オルタナティブな情報源が若者には必要」というコメントなんて、いかにも言いそう。ここまで手の込んだウソを作るとは、なんという博識、労力、情熱。もはや感嘆するしかない。

 虚構新聞社の本社は滋賀県大津市にあり、1880年の創刊後、2004年にネットに進出。社歴からしてパロディ(そもそも会社なのか!?)だが、滋賀県大津市と2004年というのは本当だろう。エイプリル・フールのウソニュースから始まり、今では月間100万人以上の人が読んでいるという。実際の世の中で奇妙珍妙な事件が起きると、「虚構新聞かと思った」というコメントがネット上を駆け巡るまでに成長した。じわじわと現実世界を侵食するかのような勢いなのである。

 そんな虚構新聞のパロディニュース(2011年~2012年掲載分)を1冊にまとめたのが『虚構新聞2013』(虚構新聞社/宝島社)だ。
「和式便器の生産終了 318年の歴史に幕」
「『2ちゃんねる』に巡回警官400人を配置 4月から」
「安倍新総裁、「3500円カレー」報道に激震 政界再編も」
「4月から、17文字に ツイッター」

 などなど、事件・事故、政治、スポーツなどに分けてパロディニュースを総決算する、かなり濃い内容。それにしても政治家は実名でとことんコケにしているし、原発に関わるきわどいものもあるし、訴えられたりしないのだろうか。そこまではいかないものの、嘘を事実と混同して紛らわしいとネット上で物議を醸したのもたしか。まあ、ちゃんと読めば誰でもウソだとわかると思うのだが、見出しだけを見て本当のニュースだと勘違いする人も中にはいるのかも。ちなみにサイトではタイトルをコピペしようとすると、「これは嘘ニュースです」という隠れた文字が見えるようになっている。

 現実のニュースの風刺・皮肉が開設の目的だが、ここまで徹底されると、なんだか冗談みたいなパラレルワールドに迷い込んだ気分。現実の深刻なニュースに疲れた方は、本書に集められたとことんおバカな記事を読んで笑い飛ばしてみては?