王道恋愛小説『ロミオとジュリエット』が400年読まれ続ける理由

文芸・カルチャー

更新日:2017/11/28

書道教室で生まれた、長い長い片想いの行方――。『葉桜』(集英社)は橋本 紡さん待望の新刊。
高校3年生の主人公・佳奈のせつない想い、移ろう青い季節のなかで、ひた向きに“書”に打ち込み、大人へと成長していく姿を繊細に描き出した、久々の王道・青春恋愛小説だ。

一人の少女が年上の先生に片想いをする――。よくある話だけれど、「よくあることだからこそ書くべきだと思った」と著者の橋本さんは言う。

「たとえば、『ロミオとジュリエット』はベタベタの話だけれど(笑)、でも、シェイクスピアの時代から400年も読まれ続けて、毎回、それをおもしろいなと思う。つまり、恋愛に関しては、人間の感情は基本的に変わらないし、そこをきれいに掬いとっていくことこそが作家の役目なんじゃないかなと、僕は思うんです」

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よくあることは、実はとても特別なこと――。だから、この小説は、青春を遥かに過ぎた人が読んでも、恋に惑い、揺れ動く気持ちは、基本的に、あの頃とまったく変わらないのだと、はっと気づかせてもくれるのだ。

「僕も含めて、実は大多数の人が、きっといくつになっても、そうなんじゃないかなと思います。和歌が詠まれた1000年前だって、きっと同じ。実際、そういう想いを詠った、すてきな歌がたくさん残っていますしね」

だから橋本さんは本書に、「もっと恋をしようよ」という思いも託したのだという。

「佳奈が最後にしっかり先生に向かっていく行為はとても大切で、それで和歌のやりとりのシーンも一切逃げずに書いたんです。しっかり求めて、しっかり傷つく。僕を含め、恋を欲するみんなに、ちゃんと手を伸ばして欲しかったから」

(ダ・ヴィンチ10月号 今月のブックマーク EXより)