かわいくて無垢で無自覚にエロい? 根強い「女神マンガ」人気

マンガ

更新日:2013/2/28

 本人はまったく自覚していないが、自分の意志のままに世界を変えることさえできる“神的”な力を持つヒロイン・涼宮ハルヒを取り巻くSFまがいの学園ストーリー『涼宮ハルヒの憂鬱』(谷川 流/角川文庫)が人気になって以来、それに近い設定の作品が登場することが多くなった。現在、アニメ放送中の『ささみさん@がんばらない』(日日日/小学館)においても、主人公の月読鎖々美は、最高神アマテラスの力を持つ巫女という設定。今はそれを管理する立場を放棄し「がんばらない」道を選んでいるものの、世の中のすべてのものに宿るという神々が、最高神である鎖々美のご機嫌を取ろうとしてあらゆる事象に対して「改変」を起こしてしまうことで、さまざまな事件に巻き込まれていく。

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 しかし、それ以前において、女の子の神様といえば由緒正しい神族であるのが主流であった。1988年から現在にいたるまでマンガ連載が長期にわたって連載中で何度もアニメ化されている『ああっ女神さまっ』(藤島康介/講談社)のベルダンディーなどがそうである。あるいは、神ではなく精霊ではあるが、1990年代後半に『月刊少年ガンガン』(当時エニックス)で連載されアニメ化もされた『まもって守護月天!』(桜野みねね/マッグガーデン)のヒロイン・シャオリンなども、そうした部類に入れていいだろう。

 ハルヒや鎖々美とベルダンディーの大きな違いは、そのいでたちや振る舞いにある。ベルダンディーの言動は文字通り神々しく、純粋無垢でおおらかな心を持ち、それでいて性の知識や意識には少々うとく(まったく無知ではないようだが)、時折無意識にちらつかせる色気やエロティシズムも魅力であるところだ。そんな女性は母性を伴うせいか、今でも男性読者にとってはロマンの形のひとつなのだが、現在は時代の流れの強さか、メジャーな作品において正統な女神がヒロインの作品を見る機会が少なくなってしまった。

 だが、完全に根絶されたかというと、そうでもない。たとえば、『月刊少年シリウス』(講談社)で連載中の『まがつき』(田口ホシノ/講談社)のヒロイン・瀬織津姫(人間界での名前は瀬織織姫)は疫病神ではあるが、そのキャラクターは無垢な天然系で、あどけなさがありながらも巨乳という“昔ながら”の女神像を堅守している。ちょっとした事故で主人公の荒巾岐八助を祟ってしまい、命を預かったことで八助は織姫と物理的に離れると死んでしまうという状況に陥ってしまい、祟りを解消するためには織姫を「幸せに」しなくてはならない、というところから始まるラブコメマンガだ。人間の世界のことをまったく知らない織姫を巡って、幼なじみで八助を慕う稲森アカリや周囲の誤解を解きながらも、その後、織姫をこよなく愛する妹の天照大神(人間界では三上ひなた)なども現れて……というドタバタな展開が続いていく。

 こうした物語に登場する女神たちは、神ゆえに人間の寿命を超越した不老不死であることが多く、ベルダンディーや織姫も例外ではないが、男の精神に宿る女神に対する欲求もこの世から消えるとは考えがたい。正統な「女神」マンガは、これからも根強く生き残り続けるのかもしれない。

文=キビタキビオ
(ダ・ヴィンチ電子ナビより)