最近の“ハーレムもの”は男子キャラが中性化!?

マンガ

更新日:2013/2/28

 学校や寮などの共同生活の場において、多種多様なキャラクター性をもつ女子大勢の中に男子がひとり……。そんな羨ましいシチュエーションで展開される作品は“ハーレムもの”と呼ばれている。『ラブひな』(赤松 健/講談社)など、1990年代の後半頃から徐々に確立してきたこのジャンルは、10年以上経過していながら、廃れるどころか一大コンテンツのひとつとなっている。現在も『GJ部(グッジョ部)』(新木 伸/小学館)や『生徒会の一存』(葵 せきな/富士見書房)など、人気作がアニメ化され放送中だ。

advertisement

 だが、最近の作品は以前と比較して徐々に変化が生じてきている。それは黒一点の男子キャラの軟弱化、中性化だ。

 もともと“ハーレムもの”は、黒一点の男子キャラが多勢を誇る女子達にもてあそばれて翻弄させられるのがお約束、という設定の作品が多い。だが、普段はヘラヘラしていても、実は漢(おとこ)らしい面を持ち合わせており、いざというときには頼りされるような青年であることもまた多かった。

 ところが、『GJ部(グッジョ部)』の唯一の男子部員・四ノ宮京夜(通称キョロ)は、小柄で幼児体型だが高飛車で負けず嫌いで意地っ張りの部長・天使真央をはじめ、清楚な雰囲気だがゲームの天才でキョロをからかうことに喜びを得ている皇 紫音や、真央の妹ながらおおらかな性格&豊満な体型で部員に紅茶を飲ませるのが趣味の天然娘・恵、そしてカナダからの留学生でいつも骨付き肉を食べている不思議系ハーフの綺羅々・バーンシュタインといった女子部員にいつもタジタジ。いいように騙されたり、からかわれてばかりなのだが、どんなことをされてもいつも言いなり、というスタイルだ。それどころか、ときには各人の髪を梳かすことを強要されることも。嘆いたり、ため息をつくだけで話が1本終わってしまう、なんてことがよくあるのだ。

 また、『生徒会の一存』の生徒会副会長・杉崎 鍵にしても、これまた小柄で幼稚で意地っ張りの生徒会長・桜野くりむをはじめ、自分以外は女子生徒ばかりで構成される生徒会を「俺のハーレム!」と公言しつつも、マイペースな言動で杉崎を困らせる生徒会女子の面々に対して、ボケたり突っ込んだり振り回されるだけで疲労困憊となるエピソードが後を絶たない。

 それまでの“ハーレムもの”では、同じようにオモチャにされていても、いざとなれば問題解決の中心人物になったり、楽しいイベントでは盛り上げ役を買って出るなどして、その恩恵を受けた女子キャラが、ひとり、またひとりと男子キャラに「ポッ」となっていくのがお決まりの流れだった。話が進むにつれて男子キャラの争奪戦となっていく図式を読者や視聴者が自分に置き換えて楽めることこそが、“ハーレムもの”の最大の魅力といってもいいだろう。それは、前出の『ラブひな』などの頃だけではなく、2011年にアニメ化されてその後も根強い人気を誇る『これはゾンビですか?』(木村心一/富士見書房)ほか、今でもよくある展開である。

 ところが、『GJ部(グッジョ部)』のキョロの場合、男らしさを見せつける場面が発生しようがない。女子達が「ポッ」となる機会がなければ、ハーレムなど発生しないでは? と思ってしまうところだ。

 だが、そうではなかった。男子が中性的になることで、女子キャラにとっては男と女という性別の垣根が取り払われ、親しみが増す方向にシフトしていたのだ。髪を梳かしてもらうという行為はまさにそのもの。男子キャラが暑苦しい“漢オーラ”を出さない分、女子の方からお互いの距離を詰めるようになり、近づき過ぎたことに気づいたところ「ドキッ」とするのである。各女子部員がキョロに髪を梳かしてもらうシーンでは、実はやってもらっている女子の方も思いのほか「きゅん」となっているのである。その意味では、男子キャラの中性化は、これまでよりも緩めの“ハーレムもの”という、また新たな境地が生まれつつあると言えるのかもしれない。男性読者は、いずれにせよ、多数の女子に好かれる黄金パターンを楽しむことができそうだ。

 とはいえ、日本男子の中性化というのは、一般社会でも危惧されるところ。作品の傾向については「それはそれ」とし、リアル男子はぜひ奮起して男らしさをみせるようにして、実社会で“ハーレム”状態を目指そうではないか!

文=キビタキビオ