思わずイラッとくる! 童貞&処女ラブコメが話題

マンガ

更新日:2013/5/21

 『耳をすませば』。言わずと知れたスタジオジブリによる名作映画だが、作品で描かれる理想の青春時代と自分がすごしてきた青春時代とのギャップから、見る人によっては、羨みや妬みから心身を不安定にさせ、近くにある壁や床を殴ってしまうという現象が見られる。これは「耳をすませない現象」と呼ばれているらしいのだが、ご存知のかたは少ないだろう。いや、ほぼいないと言っていいのかもしれない。

 とにかく、そんな現象を引き起こしてくれるような作品が、2月12日に発売された。それが『1DK』(かがみふみを/双葉社)だ。

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 この作品の主人公は、平凡な大学生カップルの、こーさんと、めぐちゃん。ふたりは、高校の先輩と後輩という仲だったが、めぐちゃんの大学入学をきっかけに付き合うことになる。しかし、このふたり、お互いが異性との経験がない、いわば童貞と処女というウブウブなカップル。しかも、基本となる舞台が、タイトルのとおり、こーさんの1DKの部屋。広くもないが狭くもない空間で、童貞と処女のカップルがいれば、どういうことになるのか。必然的に生まれるのが微妙な距離感だ。ものを食べる顔を見られては赤面し、トイレにいっても音が聞こえないか気にするし、恋人の前で横になってはみるものの、相手を意識するあまり、寝られない、というような、もうなんというか、非童貞・非処女からみれば、もどかしくてたまらないし、童貞・処女からみれば「爆発しろ!」と願ってしまうシーンがえんえんと繰り広げられる。

 この微妙な距離感を象徴するのが、ふたりの「赤面」率。ことあるごとに顔を真っ赤にしているのである。計算したところ、最高で、1話中8割ほど赤面しているというものもある。ウブなふたりだからこそできる芸当だろう。見ているこっちは、握りしめられた拳から血が噴き出しそうではあるが。

 そして、イラッと度がMAXを迎えるのは、ついに訪れたふたりの“初体験”の日! その日は、クリスマス。この時点で、もうなんというか、憤慨ものであるが続けよう。ケーキを食べ終わって、寄り添うふたり。しかし、せっかくのクリスマスなのに、童貞のため、うまくリードすることができないこーさんは落ち込んでしまう。その背中に、ソッと体をあずけ、めぐちゃんは言う「その…そういうこーさんが…好き…なので こーさんとくっつくと…うれしくて もっとくっつきたいなって もっと近く…布とかも何もない近くで…くっつきたいな…って」三点リーダーの多さが、たどたどしさを物語っているだろう。もちろん、ふたりとも顔は真っ赤である。こちらとしては、壁を殴りすぎて拳が真っ赤である。そんなこんなで、初体験を済ませるのだが、その後はテンプレートどおりの大学生カップルぶりを発揮。ふたりで一緒にお風呂、合鍵で部屋に先に入り、食事の準備をしている彼女、極めつけは、ベッドの中でイチャコラを繰り返すあまり、一日が過ぎてしまうといった感じだ。初期のたどたどしさはどこへやら。ラブラブカップルぶりを、最大限に発揮している。童貞・処女はもちろん、現在独身の男女、ボッチには辛すぎる描写が続くので、ここらへんを見るには注意が必要だろう。

 壁殴りガマン大会があれば、間違いなく選ばれるであろう、この作品。ウブウブでラブラブなカップルの日常を見る勇気があるのならば、手に取ってみてはいかがだろうか。

(ダ・ヴィンチ電子ナビより)