安倍晴明の子孫が秘密を語る! 第27代目陰陽師とは

文芸・カルチャー

更新日:2017/11/25

 陰陽師といえば、岡野玲子が『陰陽師』(白泉社)で描いた妖しげな術を駆使する風流な男の姿が思い浮かぶ。安倍晴明のイメージは、この作品によって世の中に定着した。私たちにとっては、あくまで歴史上の人物をモチーフとした物語世界の主人公である。ところが、昨年末に出版された『第27代水の家系 安倍成道 陰陽師の使命』(安倍成道/アールズ出版)によれば、陰陽師は安倍晴明から代々続き、現代に継承されているというから驚きだ。

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 本書によれば、安倍晴明はかなり女性にモテたらしく、正妻のほかに5人の側室がおり、それぞれに子をもうけたという。正室の子が宗家として安倍家を継ぎ、ほかの五家は陰陽道の「木・火・土・金・水」の役割を担った家系として陰陽道を継承し、著者の安倍成道は「水の家系」の第27代目にあたるとしている。1981年生まれで高校時代はレスリング部に所属し、コミックで描かれた陰陽師とはずいぶん異なる風貌だそうだ。

 長い歴史のなかで得た教訓から、陰陽師たちはその存在を世間の目から隠すことが習い性になり、表立った文献などには残されていないそうだ。著者のように本を出したり、ブログで情報を発信することは異例のこと。蕎麦屋の跡取りが店を今風に改装して創作料理を出したり、お寺の跡取りが若者向けイベントを寺の境内でやったり、新しい世代が今の時代に合った取り組みをしているのを見かけるけれど、陰陽師の世界でもニューウェーブ登場といったところなのだろうか。

 ところで、そもそも陰陽師とは何をする人なのか? 冠婚葬祭の暦や干支、正月の門松や節分の豆まきはなど日本古来の風習には陰陽五行にちなんだものが多く、本来は「自然に寄り添った理論体系」を駆使して天文、暦、占術などを行い、祈祷や祭祀を担当するのが職務。当時はそれが先端科学のような位置づけだったのだ。その一方、天皇や要人を呪術的な力で守る今でいう「SP」のような重職も担ったという。そうした役割は今も変わらず続いているそうだ。

 著者は、新宿の鑑定所を拠点に日本の要人や政財界の有力者の鑑定を行ったりしている。恋愛相談から仕事の相談、健康上の相談など一般の人も多く訪れているというから、かなり開かれた陰陽師である。

 3歳から15歳まで陰陽師の父のもとで過酷な修業を積んだというが、荒縄で縛られて断崖に丸一日吊るされたり、食べ物も水もない洞窟の中で一週間過ごしたり、これが本当なら今だと幼児虐待で非難されそうな過酷なものばかり。遊びたい盛りに修業を強制され、父への反発心はふくらみ続けたという。

 また、陰陽師の代表の集まりに参加するようになり、保守的で閉鎖的な雰囲気に嫌気がさしたと記している。そのため高校卒業後、陰陽師の世界から遠ざかりたい一心で、バックパッカーとして2年間、海外を放浪。その後、関東に居を移し、サラリーマン生活を送ったが、ハワイ観光の際、突然シャーマンの男性が現れ、「特別な人だけではなく、自分の周囲にいる人を助けてください」「力と正面から向き合いなさい」と諭されたことがきっかけで、陰陽師の職務に人生を捧げることに決めたのだという。

 にわかに信じがたい話のようにも思えるが、父や兄弟、旧世代との確執はいかにもありそうな話……。巻末では本書の編者自らが、その真偽について自分の意見を述べているのが興味深い。一般的には陰陽師の血筋は絶えたものと考えられ、天社土御門本庁が陰陽道を継承する正統とされているが、著者が語るように、歴史の表に出ることなく安倍晴明の血脈が受け継がれてきた可能性は否定できないとしている。編者自身100%信じているわけでもないようだが、取材を通して、嘘を感じとることができなかったそうだ。

 信じるか信じないか――それはあなた次第だ。

文=大寺 明