ヤクザは何を食べてるの? 豪快すぎる“ヤクザあるある”

生活

更新日:2013/3/18

 ヤクザ。暴排法の影響を持ち出すまでもなく、一般庶民にとっては怖くて、できれば近寄りたくない存在。しかし、映画『アウトレイジ ビヨンド』の大ヒットや、マンガや小説などで題材とされることが多いことからもみられるように、社会悪とされる一方で、その存在にひかれる人も少なくない。とはいえ、一般の人と現実のヤクザと交流することはほとんどなく、やはりヤクザは遠い存在で、ましてやフィクションじゃないそのリアルな世界を知ることは、普通に生きていれば訪れることはなかなかないだろう。

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 そんな、ヤクザの知られざるリアルな世界を覗き見できる本がある。それが『ヤクザ500人とメシを食いました!』(鈴木智彦/宝島社)だ。この本ではその名のとおり、今まで一緒に食卓を囲んだヤクザの数、500人以上と豪語する著者が、食生活をはじめとしたヤクザの生態を赤裸々に書いている。

 たとえば、ヤクザの親分ともなれば、豪華な外食ばかりを食べているというイメージをもっている方も多いだろう。しかし、これがじつは結構、家メシも多いのである。しかもその内容はじつに普通で、見方によれば質素ともとれる食事なのだ。あるヤクザの親分の朝食が、ご飯に具沢山のみそ汁だけということもあったそう。また、家メシではなく、事務所メシというケースも多く、とあるヤクザの組は、事務所の周囲に飲食店が建ち並んでいるにも関わらず、事務所内に大きなテーブルが置かれ、組員はそこでいつでもメシが食べられるようになっているそうだ。ときには、料理のうまい組員が食事をつくり、親分や幹部が、若い衆とともにメシを食べることもあるという。想像すると、何とも恐ろしいが、いまどき希少なアットホームな職場(?)ではないだろうか。

 また、ヤクザの外食の献立メニューを集計したという著者。その結果もおもしろい。なんと、焼き肉が圧倒的に多いのである。ああ、そういえば『闇金ウシジマくん』(真鍋昌平/小学館)に登場したヤクザも焼き肉を食っていたなあ、ということは脇に置いておくとして、なぜ焼き肉が多いのだろうか。その理由はなんともあっけないもので、深夜にメシを食いにいく場所が、焼き肉屋しかないからだという。そのヤクザは、こうも語っていた。「まさかファミレスに行くわけにいかんし……」。なんとも切ない理由ではないか。しかしながら、ファミレスにいくヤクザも最近では多くなってきたのだと、本書では書かれている。それも、ファミレスになれた世代が、組織の中核に入ってくることが多くなったからなのだとか。ヤクザにも世代交代の波は訪れているのである。今後はもしかしたら、マクドナルドなどでも頻繁にヤクザを見かけることになるのかもしれない。

 食に対しての行動が、豪快のひとことにつきるヤクザもいる。とある親分なんかは、本場の冷麺を食べるためだけに、自家用の小型のセスナに乗り込み韓国に向かおうとするし、天然のスッポンが手に入ったということで著者を呼び出し、自分でさばいたスッポンを振る舞う親分までいたらしいのだ。ちなみに、このスッポンの親分は、ヤクザ界の梅宮辰夫という異名をもっているとのこと。わりと、どうでもいいと言ってもいい知識が増えた気がする。

 豪快といえば、私生活がものすごいヤクザももちろんいて、音楽好きが高じて自身で曲をつくり、レコードデビューしたヤクザの親分なんか、まだまだ序の口。なんと愛人数人を集めてバンドを結成したというイケイケな組長もいたらしいのだ。「けいおん!」ならぬ「あいじん!」といったところだろうか。また、動物愛好家が行き過ぎた親分もいて、その人はなんと、サソリや、サメ(!)まで飼っていたという。ちなみにサメは、飼うことに飽きたので、最後は唐揚げにして食べたんだとか。オチまですごい人である。

 しかし、本書では、悲しい話も多い。最近では自殺するヤクザも増えていたり、ヤクザということで断られるため、死んだ親分の葬式を執り行う寺がないんだそう。

 そんな悲喜こもごものリアルヤクザ話が盛りだくさんの、この1冊。これを読んで、ヤクザを身近に感じるか、より興味をそそられるかは、絶対に敵にまわしたくないと思うかは、その人次第。だけど確実にいえるのは、ヤクザは近くて遠い存在のままでいてほしい、ということだろう。