『笑う裏社会』の著者が語る、裏社会の人々の仰天素顔

社会

更新日:2013/3/15

 最近、メディアを騒がす「関東連合」「半グレ」といった言葉。いわゆる「裏社会」には、われわれ一般人には想像できない世界が広がっている。そんな裏社会の人々を長年、取材し続け、人気コミック『闇金ウシジマくん』(真鍋昌平/小学館)に協力もしているのがライターの島田文昭氏。取材の成果をまとめた近著『笑う裏社会』(フォレスト出版)には、氏が見てきた「半グレ」「クレーマー」「外国人マフィア」「闇金業者」、そして「ヤクザ」と、一般市民であれば、あまり関わりたくない人々の仰天エピソードが満載である。

 とはいえ、テイストは「裏社会の真実」といったハードなノンフィクションというよりも、裏社会の人々のアンビリーバブルな生態を、どこかとぼけた風味で紹介する人間ルポという趣。そこには氏が裏社会の取材を続ける理由や取材スタンスが関係している。

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「『こんな人たちがいるんだ』と、自分が知らなかった世界に驚かされたのが、取材を始めたきっかけであり、今も続けている理由。また、僕はどちらかというと彼らと『ネタ元』としてではなく『友だち』になって話を聞いている、という形が多いんです」

 ゆえに「裏社会を暴く」といった方向でもなく、過度なアウトロー賛美でもなく、「街にはこんな信じられない面白い人たちがいる」といったテイストに。

「だからこの本を読んで、いろいろな人がこの世にいると知ってもらったり、または、前書きにも書きましたが外の世界はおもしろいと興味を持って街に繰り出す気になってくれたりしたらうれしいです」

 とはいえ、やはり怖いものは恐いという気もするが、島田氏は人間観察をする程度なら、そうそうトラブルに巻き込まれるようなことはないという。

「せいぜいボッタクリにあうかブッとばされる程度。殺されるようなことはめったにないですよ(笑)」

「(笑)」というところに長い取材キャリアを感じてしまうが、観察ではなく取材をする島田氏自身は恐くはないのだろうか。

「もちろん恐いときもありますよ。人間くささ、おもしろさがあるといっても、やはり裏社会の人間。仲良くなっても調子に乗ってナメたりしない方がいいのは確か。その意味で僕はビビリなんです。だけど、ビビリだからこそ今まで死に至らずやってこれた気もします。この本のあるレビューで『この小心者ライターが!』といった指摘をされたのですが『その通りです!』と思いますよ(笑)」

 とはいえ収録されたエピソードは「ヤクザに呼び出され同行することになった闇金業者の社員旅行」や「インタビューには掲載できない、ヤクザの日常会話」「ヒモ師列伝」など、ビビリの人が取材したとはとうてい思えないものばかり。読むだけでも、十分世の中の勉強(?)ができることは間違いない。

文=長谷川一秀