飲み会が盛り上がる! 酒の“うんちく”をマンガで学ぶ

食・料理

公開日:2013/3/16

 はじめて上司や先輩にバーに連れていかれたとき、メニューを見てもお酒の種類がわからず、何を頼んでいいものか迷った経験は誰しもあるはず。「シングルモルト」「ピュアモルト」と言われても、バー初心者にはよくわからない。酒場に通ってお酒のうんちくが多少わかるまでは、やはり萎縮してしまうものだ。

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 「お酒は酔えればいい」という人もいるけれど、やはり多少のうんちくは知っておいて損はない。何もわからず飲むよりも、多少は味わい方も変わるというもの。そこで短時間でレクチャーしてくれるのが、やはり本だ。『漫画・うんちく居酒屋』(室井まさね/メディアファクトリー)はマンガなので、肩肘張らずにお酒のうんちくが学べる。

 うんちくの語り部は、ボルサリーノハットにトレンチコートという出で立ちの雲竹雄三。ひとりでバーや居酒屋に現われては、居合わせた客にうんちくを語り続けるという、ありがたいのか迷惑なのかわからない謎の男だ。

 たとえば、ある客が「とりあえずビール!」と頼む。そこへすかさず雲竹は広島弁で「とりあえず」を「たちまち」と言うのだとうんちくを披露。さらに畳みかけるように「瓶ビールはなぜ633mlという中途半端な量なのか知っているか?」と語りかける。言われてみれば、たしかに中途半端な数字。これは昭和初期にビールに税金をかける際、メーカーごとにバラバラだった瓶の容量をもっとも少ないものに統一したことが、いまだに続いているため。知らなくてもいい雑学だが、話題に困ったときに小ネタで使えるかもしれない。

 お酒好きを公言する人でも、意外と知らないうんちくも多い。中でも意外だったのが、生ビールのうんちく。瓶や缶のビールとお店の生ビールは違うものと思い込んでいたのだが、実は日本のビールの99%が「生」とのこと。ビールの酵母菌を生かしたままにしておくと発酵が進んでビールの中に澱が溜まるため、以前は加熱処理をしていた。この加熱処理をしていない工場直送ビールを以前は「生ビール」と呼んでいたわけだ。ところが、NASAが開発したマイクロフィルターによって酵母菌をろ過することが可能になり、加熱処理をする必要がなくなった。1967年以降は、ほぼ全てが生ビールとなったのだ。

 日本酒も「大吟醸」「純米酒」「本醸造」など実は詳しく違いがわからなかったりする。「大吟醸」は精米歩合50%以下(米を半分以上削って造る)のお酒であり、「純米酒」は醸造アルコールを加えていないお酒、そして「本醸造」は醸造アルコールを加えたお酒となる。知識があれば、製造法がわかり、酒蔵のこだわりも理解できるわけだ。

 ちなみに冒頭の「シングルモルト」「ピュアモルト」の違いだが、「シングル」は単一の製造所で造られたモルト(麦芽)ウイスキーで、「ピュア」は複数の蒸留所のモルトを混ぜたウイスキーとなる。シングルは日本酒の「生一本」みたいなものなので、シングルモルトを頼んでおけば、違いがわかる大人として一目置かれるかもしれない。

 お酒の雑学から知識まで怒涛のようにうんちくを語る雲竹だが、驚いたことに実は下戸……。ビールジョッキ1杯でぶっ倒れるほどお酒が弱い。そして、これにもうんちくが付く。

 お酒は「鍛えれば強くなる」というのは幻想らしいのだ。お酒の強い弱いは先天的に決まっており、日本人の約半数がアルコールから生じる「アセトアルデヒト」を分解するⅡ型酵素が低活性型で弱く、さらに4%の人が完全に欠損。つまり完全なる下戸なので、無理して飲むと極めて危険だ。お酒が苦手な人は、このうんちくを用意しておけば、お酒を断りやすくなるはず。

 酒場でうんちくを披露して、お酒の違いがわかる大人ぶりを演出するもよし、小ネタとして会話を弾ませるもよし。お酒を飲む機会が増える歓送迎会シーズンに役立ちそうな1冊だ。

文=大寺 明