同人誌は悪魔の書? 魔界より恐ろしい!? コミケの常識非常識

マンガ

更新日:2013/3/25

 「見るもおぞましい開くも恐怖の一品」で、悪魔を召喚することができる本。そんな悪魔書を探しに、魔界からやってきた少女・ルイヴィが登場するのが3月1日に発売された『3日目東館のマホウ』(佐藤ちはや:著、石川沙絵:イラスト/講談社)だ。彼女が探し求める悪魔書は、「少部数で、書き手の思いが強い」ものだというのだが……。それって、もしかして同人誌じゃない!? 偶然彼女と出会った元美術部の高校生・坂本英児が思い浮かべたのは、自分が先輩に頼まれて売っていたBLなどの同人誌だった。しかも、彼女が降り立った場所は偶然にもコミケ会場だったのだ。ルイヴィの追手をやっつけるために最強の悪魔書を探す2人だが、どちらもコミケや同人誌に関する知識はさっぱり。そこで今回は、そんな2人と一緒にコミケや同人誌の常識(?)を見てみることにしよう。

 まず、コミケの会場となるのはお台場にあるビッグサイト。ここは「エントランスホールから東西に別れている」のだが、その“西の2”というエリアではBLの同人誌がたくさん売られているそう。しかし、30ページもない薄い本が1冊800円前後もするのだ。普通のマンガなら2冊買えちゃう値段だが、それが“相場”なんだとか。英児は「たった十冊で一万以上なんて異常だよ!」なんて思っているが、そんなものは当たり前。むしろ、BLの同人誌を買うために「平然と万札を取り出す少女」がごろごろいるのだ。英児はその場所を「AREA EIGHT O ONE」と名付けたのだが、そこはまさに腐女子たちの戦場。何かのグッズがゲリラ発売されるときだって、他の仲間と連絡を取り合って「すぐ行く! 列をとっておいてくれ!」なんて連携プレーを見せることも。

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 また、魔界から干渉を受けている間は人間界の時間が止まっているのだが、それが解けたあとルイヴィを追ってきた魔物が壊した穴だらけの建物を見ても、人々は無反応。そんなことよりも、買い物優先なのだ。それに、男性はネルシャツ姿や茶色のTシャツにサイズの合っていないジーンズなど、あまり身だしなみに気を遣わない人も。建物が壊れていても無反応というのはさすがに言いすぎかもしれないが、多少のことなら気にならないくらいお目当てのものに夢中なのは確かかも。

 そして、午後3時ごろになると、片付けがはじまる。これくらいの時間になると、個人の人は売る物がなくなるので自然と撤収するのだとか。そして、ほとんどの参加者がモノレールか地下鉄を使って帰っていく。たいてい「どんなにアクセスが悪くても、地元の駅まで電車をあくせく乗り継ぐ」のが当たり前のようだ。もちろん、タクシーでリッチに乗りつけるなんて人はそういない。そんなお金があるなら、1冊でも1品でも多くの商品をゲットしたいからだ。

 さらに、ビッグサイトの周辺はちょっとした広場になっているのだが、そこには「戦利品の入った紙袋に囲まれて大の字で寝て」いる者やとても家までは待てないのか「同人誌を読みふける人々」などがたくさんいるよう。コミケの常連なら、「そこで本読んだことあるよ」なんて人も多いのでは?

 オタクがこれほどまでにすべてを注ぐ同人誌は、まさに“愛”に溢れたもの。だからこそ、“愛”で描かれた同人誌には強い力が宿っているのだ。しかし、同人誌は作者の妄想が入り交じっているので、たとえ元は『ベルター戦記エイミ』という女戦士がヒロインの物語でも同人誌ではただの看護師になっている。当然、それを召喚しても戦えるはずなどない。それでも、描かれたキャラクターが出てくるのはまだいい方で、他に召喚されたのは美少女フィギュアやなんかいい香りの気体、いちごのショートケーキやセーラー服など、謎なものばかり。同人誌はその“愛”が強すぎるので、描き手がその時思っていたことや見ていたもの、趣味嗜好が大きく反映されたものが勝手に召喚されてしまうのだ。果たして、そんな同人誌からルイヴィの追手をやっつける最強の悪魔など召喚できるのだろうか? 気になる続きは、ぜひ本を読んで確かめて欲しい。