お遍路さんや熊野古道参詣も!? 次にくるアウトドアブームは?

暮らし

更新日:2013/4/1

 ここ数年のアウトドアブームはおさまる気配が見えない。自然への憧れは進化するIT化社会への反動という考察もあるが、ならば今後もこの傾向はしばらく続くだろう。それを証明するかのように、アウトドアの楽しみ方も、ジャンルの広がりや細分化を見せている。

 なかでも、これからブレイクするかも!? といわれているのが「ロングトレイル」。長い山道や街道を、自然や文化を楽しみなが歩くというものだ。距離は長いものの、基本的には登山ほどハードな登りはなく、必要な技術もそれほど多くない。宿泊もテントからホテルまでスタイルはさまざま。つまり、アウトドア初心者でも挑戦しやすいのが魅力だ。

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 海外ではアウトドアの一ジャンルとしてすでに定着しており、整備された人気コースも多い。なかには千キロ以上にも及ぶ長い長い定番コースもある。また、日本でも「信越トレイル」などといったロングトレイルコースの整備が年々増加しているが、そもそも四国の「お遍路」や熊野古道の参詣などは、ある意味「ジャパニーズ・ロングトレイル」。そう考えるとイメージが伝わりやすいかもしれない。

 欧米ではバカンスや休職を利用して歩いている人も多いが、何百キロとはいかなくても、有名コースの一部を2泊3日くらいで歩くというのでもOK。想像よりも手軽に始められるともいえる。だからこそ、今後、愛好者が増えるのではないかといわれているのだ。そんな注目度の高さは関連書籍を書店で目にすることが増えてきていることかわもわかる。

 たとえば日本のロングトレイルの第一人者である加藤則芳さんの著書『ロングトレイルという冒険』(技術評論社)は、ロングトレイルの真髄から歩き方がよくわかる1冊。紹介されている景勝地などを見るのも楽しい。紀行文としても楽しめるものならば『シェルパ斉藤の世界10大トレイル紀行』(斉藤政喜/山と渓谷社)。日本を代表するバックパッカーの著者が15年かけて踏破した世界のトレッキングコースからベスト10をセレクト。挑戦してみたいコース探し、実際の歩き方の参考にもなる。

 変わり種ならば「ウルトラライトハイキング」シリーズ(山と渓谷社)。「ウルトラライトハイキング」とは、ロングトレイルのスタイルのひとつで、とにかく荷物を軽くして、身軽に自由に歩くことを目指すスタイル。すべてをトレースするのは難しいかもしれないが、驚きのアイデア、テクニックは参考になる部分も多いはず。

 最後にひとつオススメなのが『遊歩大全』(コリン・フレッチャー:著、芦沢一洋:訳/山と渓谷社)。これはアメリカで1974年に発刊されたバックパッカーのバイブル。絶版のため長らく「幻の名著」となっていたが、昨年復刊している。まだロングトレイルという言葉がない時代の本なので直接的なノウハウ本ではないが、長距離徒歩旅行のなかで自然と共生していく精神はまさにロングトレイルの原点。自然の中を歩きたくなる気持ちを盛り上げてくれる1冊だ。

 忙しく、急ぎ気味な日常を離れ、ゆっくりと、大自然の中に入っていく。短めのコースなら一日でも十分達成感を味わえる「ロングトレイル」。今までアウトドアを避けてきた人も、これなら気軽に挑戦できるかも。

文=長谷川一秀