ヤマザキマリにぜひ描いてほしい! ジョブズ変人伝説

マンガ

更新日:2013/4/1

 映画の第2弾公開も決定し、空前のヒット作となった“お風呂マンガ”である『テルマエ・ロマエ』(エンターブレイン)が、現在発売中の『月刊コミックビーム』4月号(エンターブレイン)でついに完結を迎えた。しかし、著者であるヤマザキマリの新連載が、3月25日に発売された『Kiss』(講談社)で早くもスタートし、話題を集めている。しかも、今回の主人公は、デジタル世代のカリスマ、スティーブ・ジョブズなのだ。

 新連載「スティーブ・ジョブズ」は、早すぎる死の直後に発売され、100万部を超えるベストセラーとなった上下巻の評伝『スティーブ・ジョブズⅠ』『スティーブ・ジョブズⅡ』(ウォルター・アイザックソン:著、井口耕二:訳/講談社)が原作。『テルマエ・ロマエ』では、古代ローマの公衆浴場技師を主人公にするなど、その設定のユニークさが際立っていたヤマザキ。ジョブズといえば、カリスマ特有の“逸話の宝庫”でもあるので、一体ヤマザキがどのような話を描くのか、気になるところだ。そこで今回は、原作である『スティーブ・ジョブズⅠ』『スティーブ・ジョブズⅡ』から、ぜひヤマザキに描いてほしい“ジョブズの仰天エピソード”を紹介してみたい。

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 まず、彼が最初に就職したゲーム会社・アタリ社でのエピソード。「楽しく金を儲けよう」と書かれた広告にひかれ、その日のうちに会社を訪問したジョブズ。しかし、彼はヒッピー思想やインドの東洋哲学に傾倒していたため、“風呂に入らなくても臭くない”と信じており、ファッションもヒッピーそのもの。会社訪問時ももちろんサンダル履きで「ぐしゃぐしゃの髪とよれよれの服」。驚く人事部長に対して、「雇ってくれるまで帰らない」と堂々言い放つのである。就活中の学生にとっては「んな馬鹿な!」と思える話だが、アタリ社はジョブズを採用。さらに、「導師を探しに行ってきます」という理由で退社を上司に申し出ると同時に、“インドまでの旅費を援助してほしい”とまで言ってのけるのだが、このときも上司はドイツで製品対応するという条件を出し、欧州までの旅費を負担。こうしてジョブズはインドへ自分探しの旅に出かけていったのだ。ちなみに、ドイツの担当者からは「くさいし、失礼極まりない」というクレームの電話がかかってきたという。

 もちろん、ジョブズ独特の思想は、製品開発やデザインにも色濃く反映されているのはご存じの通り。だからこそ、アップルは唯一無二のブランドとして成長できたわけだが、たとえば、世界初の個人向けPCとなったアップルⅡの開発でも、ジョブズは「冷却用のファンがいらない電源とすること」を肝と考えた。理由はファンの音が集中力を乱すため、「“禅っぽく”なかったから」。こうした独自すぎるジョブズの考えには、ときに部下や仲間たちもついて行けないことが。しかも、強烈なダメ出しや他人の感情を無視しているかのような言動も多かったこともあり、ジョブズにつぶされてしまわないよう、1981年からは年に1回「ジョブズによく立ち向かったで賞」を授与することに。この制度をジョブズも気に入っていたそうだ。

 このように社内でも“調整する”という言葉を知らないジョブズは、自分が関わっているプロジェクトに執心。そのほかの製品を馬鹿にすることさえあった。そのため、「マッキントッシュチームは週90時間も働いている」とジョブズが自慢すれば、他の製品グループも負けじと「週70時間で製品を出荷中」「週60時間でリサ(製品名)とマックを支える」というシャツを作成し、これに応戦。楽しんで対抗していたようだ。

 また、アップルを追放された時期には、こんなエピソードも。あるとき、大学生にマッキントッシュのキーボードにサインが欲しいと頼まれたジョブズは、自分が会社を追われた後にキーボードに追加されたキーを取り外してもいいなら、という条件を出して承諾。車の鍵を使ってカーソルキーとファンクションキーを取り外し、「見るも無惨な姿になったキーボードにサイン」したという。「僕は、あるべき姿のキーボードを世の中に広め、世界を変えていきたいと思ってるんだ」――このジョブズの言葉には、彼の譲れない美学が詰まっている。

 しかも、こうした美意識は製品意外にも傾けられる。病気と闘っていた2009年、大量の鎮静剤が投与され、「まともに口がきけない状態」だったにもかかわらず、呼吸器科の医師がはめようとしたマスクに対して「こんな変なデザインのものは身につけない」と主張。「デザインの違うマスクを5種類持ってこい、そうしたら気に入ったデザインのものを選ぶから」と医師に要望を突きつけたのだ。

 このほかにも、スタンフォード大学で学生たちに向かって「君たちのなかで、童貞や処女はどのくらいいるのかな?」「LSDをやったことがあるのは何人くらいいる?」と聞いて会場をドン引きさせたり、採用試験の面接で「はじめてシタのはいくつのときだった?」と質問するなど、ジョブズの意外な下ネタエピソードなども収録。果たして、この原作をヤマザキマリがどのように調理し、“世界を変えた男”を描いていくのか。今後がとても楽しみだ。