帰国子女でラノベ好きな美少女あらわる! 『神様のメモ帳』ほか ―ブンガク!【第2回】―

更新日:2013/8/8

 中高生を中心に大人気の「ライトノベル」(通称ラノベ)。最近ではテレビアニメ化などの影響でファン層も拡大しています。そこで、ラノベって言葉は知ってても読んだことがない、という初心者向けに“超”入門コラムをお届け!代表的な作品の紹介や、楽しみ方について、作家や絵師など関係者への取材も織り交ぜながら、ラノベ風の会話劇でお送りします。毎月第1・3火曜に更新予定!

制作協力:代々木アニメーション学院 / 文=カンダ ユウヤ 絵=ましま


【前回までのおさらい】
○ブンガク部が廃部ってどういうこと?【第1回】 ブンガク!

~ブンガク部の部室~


「え~と、佐藤さんはこの春から入学してきた、帰国子女なわけですね」


「よし、帰国子女のファースト部員キター!!」


「桜井まずお前は落ち着け ……で、ここのブンガク部に入部したいと……」


「ええ、私、日本の文化であるライトノベル勉強したく思い、ここのラノベ部に入部を希望します」


「いや、ブンガク部、普通のブンガク部だから……」


「そんな、些細なことはどうでもよくてよ!私はここへ……自分が求めるものを作りたくて来たのですから」


「と、言いますと?」


「私は小さな頃から日本の文化にとても興味がありましたの……マンガやゲーム、小説などの独自の個性に基づいた物語の文化に感激を覚えたのです、主にライトノベルにですね」


「ふ~ん、特にどんなライトノベルがすきなの?」


「……はい、個人的にはドクターペッパーが大好きなニートな探偵の女の子(※1)の話とか、ジャンルなら群像劇やミステリーが好きですね」

 

※1「ドクターペッパーが大好きなニートな探偵の女の子」
『神様のメモ帳』(杉井光/アスキー・メディアワークス)

都心、周辺の街や高校などを舞台に、普通の高校生である主人公・藤島鳴海と、雇い主である探偵アリスとその仲間たちが謎を解き明かす現代ミステリー。イラスト担当はラノベ界きっての人気イラストレーター岸田メル。“ニート探偵”というトンデモ設定でありながら、ギャグとシリアスのバランスがよく、練り込まれた世界観が読者から高く評価されている。2011年7月にテレビアニメが放送された。冒頭のセリフはヒロイン・アリスのことを示す言葉。

 


「うんうん、分かるよ、その気持ち!」


「……そんな訳で、私はハイスクール卒業後、パパにお願いして自家用ジェットで日本へ。そして帰国後、この学校に入りなおしたのです」


「へ~、て、ちょっと待てッ! ハイスクール卒業後!? 君いくつだよ!!」


「16ですが、何か問題でも?」


「なん、だと!?」


「佐藤さん、16で高校卒業後!? 何だよそれ、全くわけがわからないよ!」


「ああ、そういえば言っていませんでしたね。私、中学を飛び級で進級してますので、そこのところよろしくお願いします」


「ああ、なんだ、そういうことか! まるで迷い猫に出てくる梅ノ森家の令嬢のオタク少女みたいだな(※2)、あはは……」

※2「まるで迷い猫に出てくる梅ノ森家の令嬢のオタク少女みたいだな」
『迷い猫オーバーラン!』(松智洋/スーパーダッシュ文庫)

都築巧は洋菓子店ストレイキャッツを幼ななじみの芹沢文乃と営んでいた。そして巧の姉の都築乙女が謎の美少女、霧谷希を拾って来たことで始まる学園ハイテンション・ラブコメディ。漫画『To LOVEる』の作者・矢吹健太朗がコミカライズを担当したことでも大きな話題に。2010年4月から6月までテレビアニメも放送された。“梅ノ森家の令嬢のオタク少女”とは、ヒロインの一人、梅ノ森千世のことを示す言葉。


「はは……な、なんか、すごいやつが来てしまったぞ。この調子で大丈夫かな」


「少々、時間をかけていただいて構いませんわよ、ただしその頃には、中島先輩は八つ裂きになっているでしょうけどね(※3)

※3「ただしその頃には、中島先輩は八つ裂きになっているでしょうけどね」
『刀語』(西尾維新/講談社)

戦乱の時代、刀を使わない剣士、虚刀流の七代目当主である鑢七花と奇策士とがめが伝説の刀鍛冶、四季崎記紀の作った十二本の刀、完成形変体刀を求め、日本をめぐる旅に出る大河ノベル時代小説。作者は「物語シリーズ」なども手がける超人気作家・西尾維新で、2010年に放送されたアニメが2013年4月よりフジテレビ『ノイタミナ』にて再放送するという異例の展開も。冒頭のセリフは主人公、鑢七花の敵を倒すときの決め台詞。原作では「ただしその頃には、あんたは八つ裂きになっているだろうけどな」である。


「あ……なんか、ものすごく物騒なこといわれたんだけど」


「……大丈夫です。先輩、ラノベ愛があってこそのセリフです」


「ええッ……あれが!?」


「で、入部できますの? 入部できませんの? どちらかはっきりしていただけます?」


「あ、はい、入部は大歓迎ですよ。あ、でも……」


「でも?」


「……あ、えーと、実はこの部、大ピンチなことに廃部寸前で部員を集めている最中というか、顧問もいない状況なので、とても困っているんですよ」


「What’s! なんですって!」


「あーッ、そうだった! 新入部員が来たことに浮かれていて、そのことを忘れていた! あー、どうしよう!!」


「……あ、あのこの方、大丈夫?」


「ああ、現実逃避という自己暗示の効き目が切れただけだから、大丈夫だと……思うよ、多分。 先輩、もう大丈夫ですか? もしもーし……」


「あー、やばい、どうしよう……どうしよう!」


「あー、だめだこりゃ……」


「顧問がいない、それは困りましたね。ならばせめて、顧問が見つかれば部員を集める活動ができるのですか?」


「まあ、顧問はこの先生かなっていう人はいるんだけど、名前までは分からなくてさ。誰か知らないかな? その先生のこと。そんな都合のいい話どっかに転がっている訳ないか」


「……転がっていますわよ。そんな、都合のいい話。先ほども言いませんでしたか? その方を知っていると」


「な、何、そ、その話、本当!!」


「うわ! 先輩が復活した!」


「ええ、本当です。だって私はその方が今ここで教師をなさっているという理由でこの学校に転入してきたのですから……ライトノベルに詳しい先生ですので、てっきりこの部にいるものだと思っていましたのに」


「で、その先生って誰なの」


「それは……」

 
「それは……?」

 ・・・・・・つづく

 
 
 
 

次回予告

 


「さあ、次回予告!」


「あら、もうそんな時間ですの?」


「ようやく、顧問の話まで繋がったね。良かった、良かった!」


「でも、先はまだ長そうですよ、お二人さん」


「さあ、顧問の先生は見つかるかな!」


「頼む、どうか見つかってくれ! 次回のブンガク!は顧問の先生に乞うご期待!」