白熱する“スタイリング本”戦争におばあちゃん参戦!?

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更新日:2013/4/10

 暖かくなり、装いも春夏物にシフトするこの頃、書店には人気スタイリストがコーディネート術を伝授する「スタイルブック」が女性誌コーナーにひしめいている。たとえば数々の著書や雑誌で独自のファッション論を展開してきた大草直子。2月に刊行された『大草直子の最愛リスト 服から雑貨まで62品』(講談社)を含め、これまでに出した書籍は累計20万部を突破。有名女性誌の編集を経てフリーのファッションエディター&スタイリストとして活動する彼女。ファッションへの情熱と超多忙な日々の一方で家族との時間を大切にする、オンオフどちらも“できる女像”に好感をもつ女性は多い。

 一方、“シンプル&ナチュラル”をベースに展開するコーディネートが30代女性に絶大な支持を得ている菊池京子は、昨秋に出した『colors スタイリスト菊池京子 12色のファッションファイル』(集英社)の売り上げが好調。また、3月に発売された人気ブランド「エストネーション」や「バーニーズニューヨーク」を立ち上げた業界きってのオシャレミセス・高橋みどりの『大人おしゃれのルール FASHION RULE BOOK』(講談社)も人気を集めている。

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 そんな白熱する「スタイルブック」戦争に拍車をかけるように登場した写真集が『Advanced Style ニューヨークで見つけた上級者のおしゃれスナップ』(アリ・セス・コーエン:著、岡野ひろか:訳/大和書房)だ。これは、アメリカで人気を博しているスナップブログを1冊にまとめた本の翻訳版。驚くことに、これまでスタイルブックのモデルの主流だった30~40代をはるかに凌ぐ、70~100代(!)のマダムがモデルとなっている。とはいえターゲットは前出のスタイルブック同様、30~40代の女性と思われる。

 理由は、スナップ写真とともに収録された彼女たちのファッション観が、下の世代のお手本として機能しそうだから。一見きらびやかな彼女たちだが、それはあくまで結果であり、コーディネートの根底にあるのは女としての人生哲学。「帽子は人生に残った、たったひとつのロマンスだもの」「もしみんなが着ているのであれば、それは私が着るものではないわ」といった女の人生の酸いも甘いもかみ分けた彼女たちの言葉は、ファッションの領域に留まらず、価値観や恋愛観、人生論をも含み、同作品のテーマである“ハイ・ヒューマニティー(人間性)”が感じとれる。まるで生き方を教えてもらっているようなファッションスナップと言葉は、確かに年齢問わず、多くの女性に響きそうだ。

 社会情勢を反映してか、日本の女性がファッションにかけるお金は年々、減少傾向にあるという。しかし、マダムたちの“自分流”を極めたスタイルは、たとえお金がなくても、人生における独自の哲学さえあれば魅力的なスタイルは完成すると教えてくれる。そんな女性たちを素直に勇気づけてくれる読後感こそが、この本が受け入れられた理由ではないだろうか。

文=池尾 優