有川浩作品の原点は『ガメラ』と『大脱走』?

文芸・カルチャー

更新日:2017/11/23

14日に放送スタートしたばかりのドラマ『空飛ぶ広報室』、27日公開の映画『図書館戦争』、そして来月11日より公開する映画『県庁おもてなし課』。この春を席巻するトリプル映像化の原作者・有川浩の大特集が『ダ・ヴィンチ』5月号で組まれている。

同誌では、そんな有川浩のこよなく愛する映画10作品を紹介。自身の作品に連なるルーツも語っている。

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――好きな映画を思いついた順に挙げていくと……トップバッターに出てくるのはやはり『ガメラ 大怪獣空中決戦』『ガメラ2 レギオン襲来』ですね。私が小説を書くうえで、ものすごく影響を受けた作品だと思います。怪獣映画なのに、嘘くさくない。ガメラという嘘、怪獣出現という嘘に対して、「どうやって対応する?」というリアクションの部分がリアルだから、物語全体として嘘じゃなくなってるんですよ。例えば、レギオンが襲来した時に、「ガメラの援護射撃を!」と言った人間に対して、幕僚長が「我等の火力は無限ではない!」と言う。ガメラが敵か味方かまだ分からない以上、ここで火力を使うことはできないわけです。あのあたりの判断とかせめぎ合いが、すっごくリアル。

ひとつの大きな嘘の周りに、アクチュアル(現実的)な要素を積み重ねていくという方法論を、私はこの二作に教えられました。だから自分でも、横須賀にザリガニが押し寄せて来たという話(第3作『海の底』)を、嘘じゃないように書くトライができたんですよ。映像でやれるんだったら文章でできないはずがない! と思ったんです。それと、『ガメラ2』はとにかく永島敏行がかっこいい(笑)。一人の女を巡る、二人の対極な男の恋愛劇も、しっかり堪能させてもらいました。

もう一本、絶対に欠かせないのは『大脱走』ですね。捕虜収容所から脱走する話なんですけど、脱走計画を楽しそうに練っている男たちが熱くて、かっこよくって。それから、細かなエピソードの積み立て方が素晴らしい。象徴的なのは、エンディングです。何度目かの脱走をしたスティーブ・マックィーンがナチに捕まって、収容所に帰って来る。その後、いつものように独房の壁でキャッチボールを始めるんですね。実はこれ、オープニングとラストで、画自体はまったく一緒なんです。でも、ラストではほんのちょっと変化が生じている。その変化が、物語に素晴らしい余韻をもたらしているんですよ。物語の見せ方を、この映画でたくさん勉強させてもらいました。

特集ではこのほか、『眼下の敵』『風の谷のナウシカ』『秘密結社 鷹の爪 THE MOVIE』など全10作品を、有川浩のエンターテインメント愛、映画愛が伝わってくるインタビューと共に掲載している。

取材・文=吉田大助
(『ダ・ヴィンチ』5月号「有川浩大特集」より)