4/21「キメラアント編」放送開始のアニメ『HUNTER×HUNTER』は原作がグロすぎ!?

マンガ

公開日:2013/4/20

 1998年から『週刊少年ジャンプ』で連載されている『HUNTER×HUNTER』(冨樫義博/集英社)は、たび重なる長期休載を挟みながらも、いまだ人気の高い作品だ。

 物語は主人公のゴン=フリークスが、怪物・財宝・賞金首・美食・遺跡・幻獣など、それぞれ自分の得意とする分野の稀少事物を追求するエキスパートであるハンターとなり、親友のキルア、仲間のクラピカ、レオリオなどとともにさまざまな冒険や戦いを繰り広げていくというもの。1999年に一度アニメ化され、その後オリジナルビデオアニメ(OVA)として続編も制作されたが、原作マンガの18巻途中でひと区切りつく通称「グリードアイランド編」までで途絶えていた。

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 それが、2011年から改めて物語の最初から制作され、現在も放送中である2度目のアニメにおいては、4月21日から過去未開の領域だった「キメラアント編」に突入するという。このニュースに、喜びと同時に不安を覚えた人も数多くいたのではないだろうか。

 それもそのはず。『HUNTER×HUNTER』は、初期のストーリーこそ破天荒な野生児であるゴンの痛快なアクション冴える陽気な冒険活劇だったが、「念能力」という一種の超能力を駆使した戦闘がメインとなる幻影旅団との抗争あたりから、戦いの質が明らかに変化したからだ。「念能力」の登場は、力や技術だけでなく、個々の持つ能力の特性や相性を踏まえた頭脳戦などにも発展し、戦いをより奥行きの深いものに昇華させた反面、一般的な人間をはるかに超越した能力による惨殺シーンが激増したのである。

 そして、「キメラアント編」以降はその描写にさらに拍車がかかった内容になっている。そのあまりの過激な描写ぶりに「キメラアント編の映像化は難しいだろう」という、ファンのあきらめの声も時折聞かれていたほどだった。

 キメラアント編でその残虐描写がさらにエスカレートする要因としては、念能力以外に、ゴンたちハンターが対峙する相手が人間ではない点が挙げられる。

 物語上、第一級隔離指定種に認定されているキメラアントは、もともと捕食した種の能力が次に生む子どもに受け継がれるという性質を持っているアリである。それが、突然変異的に人間サイズの女王アリが現れたことや、いくつかのめぐり合わせによって人間が襲われ、人間が捕食対象となってしまった。人間の能力を取り込んでいるキメラアントの戦闘員たちは、他にも捕食した動物の影響を受けてさまざまな姿をしているが、当然のことながら言葉を話す。だが、当初は好戦的なうえに理性的な思考がほとんどなく、人間を無邪気に殺戮していく。その姿がより残虐性を高めているのだ。

 それまでの幻影旅団との戦いや、念能力によってゲーム世界に作り上げられたグリードアイランドという島でのリアルゲームにおける戦闘においても、首が飛んだり体が破裂するような描写はあったが、あくまで人間同士の争いの領域に過ぎなかった。だが、キメラアントの戦闘員は、人間の力を上回る能力を持ち、人間を自分たちより下等の種として見下しもてあそぶ。そんな行為が次々と描かれているところが下手なホラー映画よりも恐怖を誘う。

 その極めつけが、ゴンと同じ時期にハンター試験を受けてハンターとなったポックルという念能力の使い手の最後だ。キメラアントの圧倒的な身体能力に自身の念能力がまったく通用せずに敗北を喫し、ついには脳ミソを細長い串のようなもので“クチュクチュ”とイジられ、念能力の原理や種類、活用方法などを機械じかけのごとくその口から吐かされた後に彼らの餌となってしまう姿は読者に大きなショックを与える。

 これは、同じく今季からアニメ化された人気コミック『進撃の巨人』(諫山 創/講談社)や、火星に放たれ進化したゴキブリを相手にする『テラフォーマーズ』(橘 賢一:著、貴家 悠:原著/集英社)などとも一致する怖さのベクトルと言っていいだろう。いや、ネタの登場時期としては『HUNTER×HUNTER』の方がずっと先か。

 とはいえ、現在の地上波放送におけるアニメにおいては、その表現はかなり抑えられることが予想される。原作、アニメどちらを選ぶかはそれぞれの好みによるだろうが、比較するためにも、一度は原作をチェックしておくのもいいだろう。絶大な人気を誇る作品ゆえストーリーそのものの魅力については言わずもがなだが、残虐描写にはそれなりの覚悟を! と、重ねて警告しておこう。

文=キビタキビオ