波平は安倍首相の再軍備に反対!? 知られざる磯野家の真実

マンガ

更新日:2013/5/13

「な、なんだって! 安倍首相より波平さんのほうが若いというのか!?」
──この知られざる実態に激震が走ったのは、4月22日に開かれた国会でのこと。波平とは、言わずもがな国民的アニメ『サザエさん』の磯野波平である。

 まず、民主党の高橋千秋政調会長代理が安倍首相に波平の年齢を問い、それに対して安倍が「波平さんはですね、私より1つ若いんですね。ですから57歳ですか」と返答。その後、高橋議員は「総理より4歳若い」と設定年齢を紹介し、サザエさんの家庭を基に少子化対策がいかに必要かを説明したのだった。

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 さすがは高級フィットネスクラブに通っては汗を流すという安倍首相、たしかに波平よりもずっと若く見える。むしろ波平がそんなにも若かったのかと驚いた人が多かったようだ。が、しかし。『サザエさん』の世界には、これ以上に驚くべき事実が山ほどある。1992年に発売され、200万部を超える大ベストセラーとなった『磯野家の謎』より紐解いてみよう。

 まず、その年齢についてだが、マンガ版ではタラちゃんが3歳を迎えた時点ですべての人物の年齢が止まっている。この“永遠のループ”は通称「サザエさん時空」とも呼ばれているが、マンガ版ではサザエさんは27歳、マスオさんは32歳であることが考えられるという。アニメの公式発表では「サザエ24歳、マスオ28歳」となっているので、年齢が多少違うようだ。

 そして、仮に年齢を重ねていた場合、昭和49年のマンガ連載終了時は「波平78歳、フネ70代前半、サザエ51歳、カツオ35歳、ワカメ31歳、タラオ27歳」というから、これを2013年の現在に置き換えると、波平はなんと117歳、サザエさんは90歳となる。いかに長年愛され続けているのかがよくわかるデータではないか。

 また、アニメ版に親しんできた層には到底信じがたいのが、波平とマスオが“こだわり派のファッショニスタ”であるという指摘だろう。波平は「戦後間もない混乱期」にも「蝶ネクタイにダブダブのズボン、帽子にステッキ」という出で立ちで外出。このほかにも「カーディガンの襟元に水玉のスカーフ」をあしらってみたり、「ベレー帽を購入」するなど、ブリティッシュテイストがお好みのよう。一方のマスオは「非常に前衛的」。波平が銭湯で洋服を盗まれた際、銭湯の人が「おたくの若だんなが置きわすれたレインコートがありますわ」と持ってきたのは、「なんと透明のセロファン製のコート」だったというのだ。タラちゃんと広場で遊ぶときも「ゆったりしたシルエットの幅の広いパンツ」を着用するなど、本書では“マスオはイタリアンテイストを好んでいたのでは”と推測している。それにしてもセロファン製のコートとは、マスオさんは早すぎた原宿系ファッションの体現者だったのかもしれない。

 さらに、専業主婦の代表格ともいえるサザエさんだが、実は仕事のため外に出ていた時期がある。結婚前は丸の内の出版社に勤務し、芥川・直木賞の設立者である小説家・菊池寛に会ったりしていたそう。好奇心旺盛なサザエさんに編集者はぴったりな仕事とも思えるが、なぜかすぐに退社。結婚後も探偵社に洋裁の内職、近所の子供の英語教師、お手伝いさんのパートなどを転々としたが、どれも長続きはしなかったようだ。

 このような衝撃の内容が続く本書のなかでももっとも驚かされるのが、カツオの“女装男子”ぶり。おさげヘアにセーラー服で“しつけの行き届いた女の子”に変身したときには、父親である波平ですら「カツオはどうした? 友達が待っとられるのに」と気付かない。胸にパットを入れて大人の女に変装した際は、化粧品のセールスマンに「ちょっと! お嬢さま、ちょっとだけ」と声をかけられるほどなのだ。カツオの“男の娘”姿を見てみたい人は、ぜひマンガを読んでみていただきたい。

 ちなみに、いま安倍首相がぶちあげている再軍備の問題だが、実は磯野家でも昭和20年代後半の吉田茂首相時代に再軍備に関して議論が行われている。ここでは、マスオは推進の姿勢を見せ、波平は反対の立場を取っているとのこと。安倍首相と年齢が近い波平だが、その思想はどうやら相容れないようだ。