ポストAKBはももクロでなく壇蜜? アベノミクスでアイドルブーム崩壊!? 

芸能

更新日:2014/1/29

 デフレ脱却を旗印に、安倍内閣が打ち出した“3本の矢”からなる経済政策、通称「アベノミクス」。景気回復への期待感は日増しに高まる一方だが、そんななか“アベノミクスによってAKB48が大ピンチ”だと主張する本が話題を集めている。経済学者・田中秀臣の新刊『日本経済復活が引き起こすAKB48の終焉』(主婦の友社)だ。

 本書によれば、「芸能界、特に女性グループアイドルの世界においては、景気回復は決して望むべき事態ではない」という。これまで国民的な人気を獲得してきた女性アイドルグループは、不況によって人気が支えられてきた側面があるというのだ。

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 まず、AKBが生まれる基礎をつくった、おニャン子クラブはどうだったのか。おニャン子クラブが『セーラー服を脱がさないで』でデビューしたのは、1985年。まさしく彼女たちがブレイクを果たした同じ時期に「プラザ合意による急激な円高に端を発した円高不況」が始まったのだ。が、この円高不況を受けて、政府は内需拡大路線を敷くべく金融緩和政策を行い、景気は上向きに。円高不況が終わったころには、おニャン子クラブの人気も下火となり、87年9月には解散を迎えた。

 また、数々のヒットを飛ばしたモーニング娘。の場合は、不況の真っ只中である97年に誕生。97年から98年にかけては、北海道拓殖銀行や山一証券といった大手金融機関がぞくぞくと破綻・倒産した時期と重なる。

 そして、肝心のAKB48は、ご存じの通りデフレ不況のなかデビュー。ただ、不況とはいえ、結成当初の05年は「多少の景気回復期」。今では語り草になっている「初公演の客は7人」という“初期の苦戦”も、著者はそうした景気回復期であることが影響したのではと述べている。そう、AKBが初めて“アキバ枠”として紅白歌合戦に出場した07年は、アメリカでサブプライムローンが問題になった年。『大声ダイヤモンド』で一躍人気を加速させていった08年は、リーマンショックに世界が大きく揺れた。いわば、デフレ不況とともにAKBは成長を果たしたという見方だ。

 では、なぜ“アイドルは不況に強い”のか。著者はその理由を、景気に左右される人々の嗜好から考察。不況時には消費意欲が減退し「内向き志向」になるが、好況期には「疑似恋愛の対象となるアイドルよりは、生身の人間、本物の恋人へと関心が向かうようになりがち」だという。振り返ってみれば、おニャン子クラブもモー娘。も、テレビ番組のオーディションから登場したグループ。テレビはお金のかからない娯楽の筆頭であり、テレビのなかのアイドルを“バーチャルな恋人”として消費する文化は、山口百恵に桜田淳子、森昌子の「花の中三トリオ」の時代から続くもの。お金もかけずに楽しめるテレビのアイドルたちは、不況時にはとくに愛されやすいというわけだ。

 その上、AKBは「インターネットに軸足を置いた初のアイドル」である。ぐぐたす(Google+)やブログなどを活用し、ほぼお金をかけずアイドルたちと“24時間オンデマンドで交流できる”というAKBの戦略は、デフレ不況にぴったりだっただけでなく、ファンに「精神的なつながり」をも生み出した。著者はこれを「物語消費」と呼ぶが、メンバーの成長物語さえも消費させることで、握手券や総選挙の投票権のためにCDを大量買いするようなガチヲタを数多く発生させたともいえるだろう。

 しかし、これが好況期になると「リアルな消費」が増え、物語消費的なアイドルよりも、過激で刺激の強いセクシータレントやグラビアアイドルに注目が集まるという。たしかに、バブル期にはC.C.ガールズやギリギリガールズといった“セクシーユニットの百花繚乱時代”があった。著者はこうした点を踏まえて、現在の壇蜜人気についても、好況期の“はしり”ではないかと推測している。

 アベノミクスという逆風に加え、峯岸みなみの坊主騒動に見られる「社会のモラルとの軋轢」や、数々のスキャンダルが発覚するなど、苦難が噴出中のAKB。著者は「間違いなく今、AKB48は岐路に立たされています」と断言するが、一方でわざわざ“きたりえ(北原里英)推し”と書き記しているほどなので、複雑な心境でこの事態を捉えているのだろう。そのためか、著者は危機回避の方法として「全アイドル参加の選抜総選挙」の開催を提案。“ももクロの百田夏菜子が底力を発揮するのか? モー娘。が伝統と実績を見せつけるのか? LinQなどのローカルアイドルが大番狂わせを起こすのか?”と夢のある妄想をふくらませている。

 この壮大な総選挙が実現するか否かは別として、果たしてアベノミクスはAKB人気の息の根を止めてしまうのか。そして、そもそもアベノミクスは成功するのか。今後も景況に注目したい。