世界遺産となる「富士山」の噴火はある!? 地球科学から「自然災害」を考える

科学

更新日:2020/9/1

 日本各地で頻発する地震、これまでにほとんど発生しなかった竜巻や、季節外れの低温や降雪、夏になれば台風や大雨、ゲリラ豪雨など、このところの自然災害について「何かおかしい」と感じている人は多いだろう。地球規模ではいったい何が起こっているのだろうか? 京都大学で「地球科学入門」という人気講義を担当している、火山学、地球科学、科学コミュニケーションが専門の鎌田浩毅教授の『地球科学入門1 次に来る自然災害 地震・噴火・異常気象』(PHP研究所)を紐解いてみた。

 2011年の東日本大震災を契機に、日本列島では巨大災害の世紀が始まり、地震と火山噴火の活動期に入ったことで、「4つの災害」が懸念されているという。第1の災害は、東北地方の太平洋沖で起きる余震だ。いったんマグニチュード9クラスの巨大地震が発生すると、マグニチュード8クラスという最大規模の余震が数年以上も後になって起こるのだという。さらに太平洋沖で起きる地震は、津波の危険性があることも忘れてはならない。そして第2の災害は、陸域で起きる直下型地震だ。東京を含む東日本の内陸部では、地震の確率がさらに高まっているという。

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 第3の災害は活火山の噴火の誘発だ。20世紀以降、世界で発生したマグニチュード9クラスの地震のあとには、ほぼ例外なく噴火があるのだという。日本列島には110個も活火山があり、そのどれもがいつ噴火してもおかしくなく、6月にユネスコの世界文化遺産に登録される予定の富士山も油断はできない。富士山が噴火した場合の被害額は約2.5兆円と予測されているが、富士山が正式に世界遺産になると日本のみならず世界中からの観光客が増えるので、この被害額はさらに増えると考えるべきだろう。

 そして第4の災害は西日本大震災だ。鎌田教授が一番心配しているという西日本の太平洋沿岸で起きる巨大地震は、東海地震、東南海地震、南海地震が同時に発生する「連動型地震」が最悪のシナリオだ。鎌田教授は2040年までには連動型地震が確実に起こるだろうと指摘している。

 また異常気象が頻発しているといわれるが、元来、自然界ではあらゆることが変化、変動することで均衡を保っているのだという。ある地域で異常な高温になると別の地域では異常低温に、干ばつがあれば豪雨があるなど、地球全体としてバランスを取ろうとするそうだ。つまり「同じ事は二度とない」というのは、地球規模で考えれば「正常」なことなのだ。ちなみに気象庁の定義では、異常気象というのは30年に1回程度起こる現象のことだそうだ。地球の長い歴史から考えると、30年というのはあっという間の出来事だ。それは地球温暖化にも当てはまり、長期的に見ると現在の地球は「寒冷化」へと向かっていて、その途中で短期的な「温暖化」が問題となっているのだという。

 こうしたことは「地球科学のリテラシー」、つまり地球科学の知識があればわかることだと力説する鎌田教授。本書とともに『火山と地震の国に暮らす』(岩波書店)、『もし富士山が噴火したら』(東洋経済新報社)、『地震と火山の日本を生きのびる知恵』(メディアファクトリー)、『資源がわかればエネルギー問題が見える』(PHP研究所)、『京大人気講義 生き抜くための地震学』(筑摩書房)など、東日本大震災以後に書かれた鎌田教授の著作も合わせて読み、「自分だけは大丈夫」という慢心を捨てて、情報に振り回されず、災害に遭っても慌てない知識を持ちたいものだ。日本、いや地球にいる限り、絶対に自然災害からは逃れられないのだから。

文=成田全(ナリタタモツ)