なぜBLではヤンキーが“受け”が定番なのか?

BL

更新日:2013/5/24

 みなさんがヤンキーと聞いて思い浮かべるのは、どんな人だろう。強面の人や目付きの悪い人。ガタイが良くて腕っ節も強かったり、キレやすくてケンカっ早い人? とにかく怖そうだったり男らしいイメージの強いヤンキーだが、なぜかBLにおいては5月10日に発売された『睨めば恋』(ゆくえ萌葱/海王社)や『デキすぎ君とヤンキーちゃん』(春野アヒル/芳文社)、『三途の川の向こうの君』(さかもと麻乃/ジュリアン)など、ヤンキーが“受け”というカップリングが多い。では、なぜこれほどまでにヤンキー受けが人気なのだろう?

 まず、一見怖そうなヤンキーたちだが、実は何かコンプレックスを持っていたり、自分を守るために強がっている人も多い。『睨めば恋』の竜之介は目付きが悪く、昔兄が散々暴れていたせいもあって周りから常にケンカを売られていた。しかも、それをすべて買っていたので不良と恐れられ、周りに人が寄って来なくなってしまったのだ。だけど、本当は自分のことを「畏怖とか特別視しねーで普通に接してくれる奴」が欲しかった。友達や優しく触れられることに憧れていたのだ。そして、びっくりしたり感情の起伏が激しくなると子どもになってしまう『デキすぎ君とヤンキーちゃん』の竜崎は、その体質のせいで彼女にフラれたり周りから子ども扱いされてしまい、トラウマを抱えて人を寄せ付けなくなってしまう。『三途の川の向こうの君』の翔太は、子どもの頃から「女々しい」と言われていじめられることが多く、ずっと自分のことが嫌いだった。おまけに、自分が女に興味が持てないと気づいてからはそんな自分の弱さを隠すためヤンキーグループに入ったのだ。彼らの弱い部分を見てしまったら、ついつい守ってあげたくなってしまう。

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 そして、意外にもかわいらしい一面を持っているヤンキーたち。『睨めば恋』の竜之介のように、猫舌で甘党だったり、猫を触る手つきが思いのほか優しかったり。おまけに、家では割烹着を着て兄のためにピーマン抜きのオムライスを作ってあげたり、「飯中に肘つかない」とお母さんのような注意をしてくる。そんな姿を見ると、もう怖いなんて思えなくなってしまう。『デキすぎ君とヤンキーちゃん』の竜崎は、超ブラコンで保育園児の弟のために毎朝ごはんを作って送り迎えしたり、弟のお遊戯見たさにそわそわしたりするし、『三途の川の向こうの君』の翔太も、坂口安吾が好きで小説を読んでいたり、都市伝説を信じていたりする。そんな彼らのギャップを見たら、萌えないはずがない。

 さらに、ヤンキーたちは、好きな人や自分が受け入れた相手にはとことん優しくなる。だから、相手はもっといじめたりかわいがっていろんな表情をさせてみたいと思ってしまうのだ。『三途の川の向こうの君』の翔太は、いつも自転車通学なのに行人と一緒にいたくてバスで通学してみたり、行人の影響でアップにしていた髪を下ろし、ネクタイをちゃんとしめるようになる。おまけに行人の一挙手一投足にまでいちいち反応し、行人が彼女と別れたと聞くと思わずニヤけてしまうのだ。そのせいで、自分が行人のことを好きだとバレてしまうほど。そして、行人がケガをしたときは泣きながら「ごめん」と謝るのだ。自分のために涙を流す姿なんか見てしまったら、行人じゃなくても惹かれてしまうだろう。

 また、びっくりすると子どもになるという体質が委員長である城ヶ崎にバレてしまった『デキすぎ君とヤンキーちゃん』の竜崎も、自分に協力すると言ってくれた城ヶ崎に対して「ありがとな」と言ってへにゃっと笑う。そして、いつもサボってばかりだった竜崎が城ヶ崎に言われなくても自分から学校に来るようになったり、数学オリンピックの代表として海外に行った城ヶ崎が帰国する日には、そわそわしながら教室で彼の帰りを待っていたりするのだ。さらに、城ヶ崎からお土産をもらうとイライラしていたことさえ一瞬で消え、真っ赤になって喜ぶ。『睨めば恋』の竜之介はというと、両思いというワードを聞いただけで真っ赤になるし、キスをやめようとすると手を掴んで「…そ それで終わりか」なんて照れながら聞いてくる。エッチの時だって全く抵抗しないし、「…お前増々強引になってきたぞ」と言いながらもされるがまま。さらに、初エッチの最中に「俺のが先に好きだった」なんてかわいいこと言われたらもう我慢できない。

 見た目とは裏腹に、健気で純情なタイプが多いヤンキー。これらの作品を読めば、ヤンキー受けの虜になること間違いなし!

文=小里樹