鉄道の知識で政治問題を解決! 鉄ヲタ議員が日本を救う

マンガ

公開日:2013/6/1

 夏の参院選まで約1ヵ月。世間の関心も少しずつ高まっている。そんななか、ちょっと気になる政治マンガがある。『ビックコミックオリジナル』(小学館)で連載中の『テツぼん』(永松 潔、高橋遠州/小学館)だ。

 フリーターの主人公が代議士だった父の跡を継ぐことになり、突然、二世議員に、というストーリーなのだが、ポイントはこの主人公・仙露鉄男が鉄道オタクであること。本人は金にも権力にも興味なし。議員になったことで趣味にかけられる時間が少なくなると嘆く、やる気ゼロの政治家。しかし、毎回、押しつけられた政治的問題を豊富な鉄道知識を駆使して解決してしまう。

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 たとえば「過疎地区を特定目的鉄道によって町おこしに成功し、企業の党支持を取りつける」「利権や公共事業凍結など政党間の駆け引きが絡む渋滞問題を、高架道にバスを走らせることで解決」といった具合。政治には興味ゼロでも鉄道とその周辺の事柄となれば熱心になる、というわけだ。

 いわれてみれば、政治の世界にうずまく利権と交通行政は近しいところにある。となると、政治の世界で鉄道オタクの知識が生きる、ということは、あながち非現実的とも言い切れない。もちろん、なんでも鉄道知識で解決、というマンガならではご都合主義が強い時もある。また、実際の政治、行政の現場ではマンガほどスムーズに物事が進まないのも確かだろう。

 しかし、だからこそ(本人にはほぼ、自覚はないが)政局や利権、しがらみ、金にとらわれず、問題を解決していく仙露には、一種の理想の政治が見え、カタルシスを感じる。その観点で、交通問題に偏りはあるものの、同じ政治マンガでも『テツぼん』は「政局」ではなく「政策」を重視した作品といえよう。難しい政治の話もマンガなら入り込みやすい。選挙の前に、一読してみてはいかがだろう。あ、もちろん鉄道マンガとしても十分、楽しめますよ。

文=長谷川一秀(ユーフォリアファクトリー)