『ちびまる子ちゃん』のスピンオフドラマ『永沢君』、その毒舌キャラの魅力とは

テレビ

更新日:2018/8/29

『てんこ盛り!!永沢君』(さくらももこ/小学館)

『てんこ盛り!!永沢君』(さくらももこ/小学館)

 現在TBSで放送中のドラマ『永沢君』。『ちびまる子ちゃん』でも毒舌キャラとしておなじみの永沢君だが、ドラマでは中学生になった彼を主人公に物語が進む。そしてこの『永沢君』というドラマ、ネットではキャストがやばいと話題になっているのだ。劇団ひとりが終始半目で演じる永沢君や、はんにゃの金田哲演じる藤木君の完成度の高さ。野口さん役のハリセンボン箕輪はるかに花輪君役のウエンツ瑛士、小杉君に至っては性別も越えて森三中の大島美幸が演じているのだが、どれもこれ以上ないほどのハマり役だ。そんなドラマの放送を記念して、5月30日には『てんこ盛り!!永沢君』(さくらももこ/小学館)という本も発売された。そこから、これほどまでにピックアップされる永沢君の魅力を見てみよう。

 まず、永沢君の魅力といえば、ひねくれた性格と顔色ひとつ変えずにたんたんと放つキツイひとこと。いつも冷めた目線で的確に相手を痛めつけるポイントをついてくるのだが、中学生になってもその毒舌っぷりは健在のよう。ただキツイことを言うだけじゃなく、1回あげておいて落とすところがまたたまらない。たとえば、藤木君が新しく買った帽子をお披露目すると「そうだね、キミはよく似合っているよ」と褒めておいて「安っぽいかんじがキミにはピッタリだね」で一気に落とす。卑怯なことをしてしまった藤木君が「キミは今まで通りにボクとつきあってくれるかい」と聞くと「もちろんさ」と即答。しかし、それに感動している藤木君をよそに「今までだって大した関係じゃなかったからね」と何食わぬ顔で付け足すのだ。普通の人ならためらうようなことも、彼はまったく気にしない。いっそここまで思ったことをズケズケ口にされたら、かえって憎めなくなってしまう。

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 そんな永沢君にも、ちゃんと中学生男子らしい一面がある。さんざんバカにしていたクラスメイトの倉田からこっそりエロ本を貸してもらったり、どうしてもエッチな本が読みたくて「タイトルからは全く想像もつかないほど、いやらしい事がいっぱい書いてある」ことで有名な本をドキドキしながらレジに持って行ったり。不良のクラスメイトが、女子にキスを迫ったりスカートをめくっているのを見て「…不良はいいよな」と羨ましがったりもする。こんなごく普通の中学生と同じような一面を見せられると、なんだか可愛らしく思えてくる。

 さらに、この本に収録されている「小説 永沢君の詳細」を読めば、生まれてから彼に弟ができるまでの生い立ちを細かく知ることもできる。生まれたときから可愛気のなかった永沢君だが、ずーっとそうだったわけじゃない。保育園に入っても、他の子と遊ぶことが楽しいとも思っていなかった彼はひとりで過ごすことが多かった。しかし、そんな永沢君を心配した両親がある日近所で生まれた子ネコをもらってくると、今まで何に対しても特に興味を示さなかった彼がとても興味を持ったのだ。子ネコに“ミー”という名を自ら命名し、エサを与えたり、抱っこしたり、ときには一緒に眠ったりもしていたという。おまけに「ネコの話題になると永沢が目を輝かせてうれしそうな笑顔」を見せていたというから驚きだ。でも、そのネコがある日行方不明になってしまったことから、ネコを飼う前よりも確実に暗くなってしまったそう。意外にも、昔はやさしく繊細な部分があったようだ。

 こんなふうに、幼い頃のこの辛い経験があったからこそ今の永沢君が生まれたのだろう。永沢君の魅力がたっぷり詰まったこの本を読めば、あなたももっともっと永沢君のことが好きになるかも?

文=小里樹