鉄道ファン垂涎! 「駅メロ」作家が明かす誕生秘話

暮らし

更新日:2013/6/10

 自分が住んでいる駅の発車メロディや接近メロディといった「駅メロ」を、覚えているだろうか? こう聞かれてすぐに思い出せる人は少ないだろうが、駅に降り立ち、改札に向かいつつメロディを聞いていると、「今日も帰ってきたなぁ」という妙な安心感があるという人は多いかもしれない。

 もはや駅の定番的存在となった「駅メロ」の誕生は、1989年。それ以前はブザーや発車ベルで「もう発車するぞ!」と騒がしく煽られていたのを思い返すと、ずいぶんと柔らかくなったものだ。だが、始めた当初は「変にせき立てられて、ケガをする!」という言いがかりのようなクレームも多かったのだそう。また、ワイドショーで「事故の原因は駅メロではないか」などと濡れ衣を着せられかけたこともあるという。しかし、それはかえって駅メロが広く知られるようになったターニングポイントでもあったのだ。

advertisement

 『駅メロ! THE BEST【山手線、メトロ、京急、山陽電鉄ほかオリジナル音源CD楽譜付き】』(塩塚博/扶桑社)でそう語るのは、駅メロ作曲の第一人者“鉄のみゅーじしゃん”こと、塩塚博さん。中央本線三鷹駅の『めだかの学校』や、京浜東北線浦和駅で流れる浦和レッズ応援歌『KEEP ON RISING』などのJRご当地駅メロは彼の作品だ。また、首都圏のJR各線駅で採用されている「SHシリーズ」(SHは彼のイニシャル)には、採用駅数が50を超える人気曲も。その他東京メトロ、京浜急行など、東京で電車に乗ったことがあれば、必ずと言っていいほど耳にしているものばかりである。

 これまでも駅メロCDは登場していたのが、鉄道会社の枠を超えることはなかった。しかし同書には、各社にわたる彼のベスト駅メロ作品CDが付いている。じっくり聴いてみると、曲の終盤は問いかけるような和音で終わっているものが多い。これを彼は「偽終止」と呼んでおり、乗車を促す音楽にさりげなく緊張感を盛り込んでいるのだそう。このようなめったに聞けない曲解説に加え、楽譜も掲載されているので、興味がある人はマスターしてみては?

 普段何気なく耳にしている駅メロ。そのルーツを知れば、電車の待ち時間や移動時間をもっと楽しく過ごせるかも。

文=廣野順子(Office Ti+)