ファン待望、6年ぶりの新刊が1位に。奇妙で愉快な脳内ドキュメンタリー

文芸・カルチャー

更新日:2017/11/23

 その年の上半期もっともおもしろかった本を決める雑誌『ダ・ヴィンチ』主催「2013上半期BOOK OF THE YEAR」。発売中の7月号では、全国の書店員と本読みのプロが選んだランキングがジャンルごとに発表されている。(※)ここではエッセイ・ノンフィクション部門を紹介しよう。

――独創的な岸本佐知子ワールドの魅力の虜になっていたファンが待ち望んでいた6年ぶりのエッセイ新刊『なんらかの事情』が第1位。長く待ちわびた人の期待を裏切らない濃い内容にポイントが集まった。

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 僅差の2位は、『僕の死に方 エンディングダイアリー500日』(金子哲雄)。テレビやラジオ、雑誌など多くのメディアで活躍してきた著者の急逝後に発売されたことが話題になり、その仕事に対する凄まじい熱意と真摯な“死に様”に落涙必至の一冊。「最後まで自分らしさを貫いて生き抜いた記録がここにあります。“終活”の参考にぜひ」(紀伊國屋書店福岡本店・日田麻美)の声も。

 3、4位はいずれも取材に時間をかけて、多くの情報と分析を盛り込んだ書籍ならではの読み応えのある骨太なノンフィクション。これまで知らなかった世界を知ることは間違いなく読書がもたらしてくれる快楽のひとつだろう。

 5位は固定ファンも多い人気作家・伊集院静によるエッセイ。遠慮のないストレートな語り口で綴られる、生きる指針になるような人生論が支持された。

 ランキング全体では、かつて人気があった“癒やし系”より、未知の世界や人物を知り、より深く心に突き刺さるものを求めている読者が増えたという印象を受ける結果になった。――本誌より一部抜粋

 同誌では、1位の岸本佐知子のインタビューも掲載されているほか、全10位のランキングを発表。気分にぴったり、好みの1冊が見つかるかも?

■1位 『なんらかの事情』 岸本佐知子 筑摩書房
■2位 『僕の死に方エンディングダイアリー500日』 金子哲雄 小学館 
■3位 『謎の独立国家ソマリランドそして海賊国家プントランドと戦国南部ソマリア』 高野秀行 本の雑誌社 
■4位 『エンジェルフライト国際霊柩送還士』 佐々涼子 集英社
■5位 『別れる力 大人の流儀3』 伊集院 静 講談社

※全国の書店員に加え、選考委員(作家、書評家、ライター、本誌編集部員)にアンケートを実施。2012年10月1日~2013年4月6日に発売された書籍の中から、オススメの5冊をジャンルごとにあげてもらった。のべ1025名に回答をいただき、順位別に傾斜をつけて集計、ランキングを作成した。

構成・文=橋富政彦
(『ダ・ヴィンチ』7月号「2013年上半期BOOK OF THE YEAR」より)