目玉焼きの黄身は、いつつぶす? 新感覚のグルメマンガが話題!

食・料理

更新日:2013/6/17

 今、注目を集めているグルメマンガの1巻が発売された。その名も『目玉焼きの黄身 いつつぶす?』(エンターブレイン)。作者はギャグマンガ界の奇才おおひなたごう。彼の描くグルメマンガが普通であるはずがない。そう、『目玉焼きの黄身 いつつぶす?』は、料理ではなく、その食べ方に焦点を当てた、新機軸のグルメマンガなのだ。

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 たとえば、タイトルにもなった「目玉焼きの黄身 いつつぶす?」という問いに、あなたはどう答えるだろうか。ちなみに主人公の二郎は、最初に黄身をつぶして醤油をたらし、白身と付け合わせをからめて食べる、という方法をとっている。対して恋人のみふゆは、黄身をつぶさずに、まわりの白身を食べていき、最後に残った黄身を口に放り込むという荒技を披露する。これには二郎も思わず「ぎょっ」。また、二郎の勤め先の近藤さんは、途中まではみふゆと一緒だが最後に残った黄身を丼に移し、そこで黄身をつぶしてご飯と混ぜてかっこむという食べ方だ。人によっては、白身をある程度まで食べ、白身本来の味を堪能してから黄身をつぶすという食べ方をする人もいるだろう。このように、目玉焼きひとつとっても、じつにさまざまな食べ方が存在するのである。

 では、とんかつの付け合わせのキャベツを、あなたはいつ食べるだろうか。とんかつをたいらげた後で、一気にキャベツをかっこむ。とんかつを一口食べて、のみこんだ後で、キャベツを口に運び、のみこみ、またとんかつを食べる。(作中ではこれを「キャベツで中和させる」といっている)。とんかつとともにキャベツを口に運び、渾然となった状態の口のなかに、ご飯を投入するといった食べ方が本作では紹介されている。いっそ、キャベツを残すという選択肢もあるだろう。また、ソースをキャベツにかけるか、ご飯にもかけるか、なども考えだしたらキリがない。まるで食べ方の幅が宇宙のように広がっていくのを感じるだろう。

 キリがないといえば、カレーの食べ方なんかもそうだろう。通常のカレーならば、ライスとルーが皿の真ん中で別れるように別々になっている。しかし、その状態のまま、真ん中から食べていってしまうとライスとルーの距離がどんどんと離れていってしまい、スプーンがせわしなく動いてしまう結果になるのだ。二郎は、この食べ方に悩み、ルーをライスの上にかける、全かけをしたいとモンモンとする。全かけではないカレーの食べ方としては、全部混ぜるという業の深いやり方もあるが、これは見た目があまりよろしくはないらしく、二郎は敬遠している。ほかにも、ルーをひとすくいしてライスにかけ、それからライスをすくって食べるという方法も紹介されている。まさにカレーひとつとっても食べ方は多種多様。しかし、ここはぜひ、半かけのカレーを出された時点で、ルーを全部ライスにかけて食す「カレールーのナイアガラ」という技を二郎に教えてあげたいところ。だが、相手は二次元。この次元の壁に対して、悔しさを感じずにはいられない。ああ、二次元行きの電車があればいいのに……。

 みかんの剥き方なんてものも本書では紹介されている。人によって、その剥き方もいろいろあるが、二郎はどうしても皮をバラバラにして剥いてしまう。一方、彼女のみふゆは、まるで剥いた皮が開いた花びらのように、キレイに剥いていく。二郎はその美しさに嫉妬の感情がわいてしまうのだが、それは一旦置いておくとして、世の中にはじつにさまざまな剥き方があるのだ。たとえば、人によっては、動物の形のように皮を剥く人もいるし、バラバラに剥いた皮をタワーのように積み上げて楽しむ人もいる。皮がついた状態のみかんを半分に割って、ヘタの方から剥いていくなんて剥き方も本書では紹介されており、その多彩さだけでも、非常におもしろい。

 今までは、自分以外の人の食べ方なんて興味もなかった方も多いだろう。だが、世の中には、夜空にきらめく星のように、じつにさまざまな食べ方があるのだ。そんなことを教えてくれる本書。読めばときに驚きが、そしてときに共感が待ち受けているだろう。

 自分の食べ方がジャスティスだと思ってはいけない。もしかしたら、別の人から見ればそれは「おかしい」と思われているかもしれないのである。そのことを重々、理解しておこう。

文=オンダ ヒロ