ラノベって女の子でも読めるの? 『キノの旅』ほか ―ブンガク!【第6回】―
更新日:2013/8/8
【前回までのおさらい】
○【第1回】ブンガク部が廃部ってどういうこと?
○【第2回】帰国子女でラノベ好きな美少女あらわる!
○【第3回】ブンガク部の救世主?顧問をさがせ
○【第4回】ラノベ好きな先生からの挑戦状
○【第5回】『東京レイヴンズ』作者・あざの耕平さんに聞いてみた
~教室~
「さてと、授業も終わった。そうだ、部活、部活!」
「……ねえ、中島君。今日は日直でしょう、どこに行くの?」
「ああ、そうだった。ごめん、忘れてた……」
「え、いいよ。そんなに気にしなくても……」
「そう、今川さん」
「ところで中島君、どうしたのそんなに急いで?」
「いや、実はね。いま部活が大変なことになっててね、これから、部員募集をするためにいろいろと作業がね……」
「ああ、ブンガク部のこと、こないだはすごかったよね、校内ラジオで大盛り上がりでさ」
「うん、本当にいきなりラジオだなんて、まったく勘弁してほしいよ」
「でも、凸凹コンビが面白い部活を始めたって、校内で意外と話題になってたよ」
「え? なにそれ、僕らいつからコンビ扱いになってたの?」
「ん? ……で、ブンガク部って、どういう活動をしてるの?」
「基本は、お話とか、小説とかを書いたりしているよ。まあ主な面々はライトノベルを書いてるけど……」
「小説かぁ……ん? それとライトノベルって?」
「えーっと、分かりやすく言うと表紙や挿絵にアニメ調のイラストを使った中高生向けの娯楽小説のことかな。僕もこの頃、少しずつは読み始めているけど、とてもジャンルや種類が多いんだよ」
「へえ~、そうなんだ。どういうのが面白いの、私にも読めそうなものもあるかな?」
「そうだな、今川さんは女の子だから、女の子におすすめとなると何があるかな? ……う~ん、あ! そうだ。最近読んだ中ではアレがいいかもしれない」
「アレって?」
「『キノの旅』(※1)っていうファンタジー作品。ほぼ1話完結型のお話で読みやすいし、旅で得る文化の違いみたいのがテーマだから価値観が広がって面白かったな」
※1
『キノの旅』(時雨沢 恵一/アスキー・メディアワークス)
銃の名手で食いしん坊のキノと、喋る二輪車エルメスの旅を描いたロードノベル。様々な国を巡り、その国の独特な制度や技術など別々の価値観を持った国家や国民と関わりがシニカルに描かれる。物語の情景を美しくリリカルに表現したイラストは黒星紅白が担当している。シリーズ累計で770万部を超える大ヒットシリーズで、2003年4月よりテレビアニメが放送され、2005年には映画化もされた。
「旅、かあ……いいね、なんか面白そうだね。他にも何かないの?」
「そうだな、『悪霊シリーズ』(※2)とかかな~。主人公の女子高生が、ナルシストの美少年と出会い、変人揃いな仲間の霊能者たちと怪事件に挑むって話。ミステリやホラーが好きな人にはおすすめだよ」
※2「悪霊シリーズ」
『ゴーストハント』(小野不由美/メディアファクトリー)
取り壊すと必ず事故が起こると噂されている木造の旧校舎。高校1年生の麻衣はひょんなことから、調査に訪れた「渋谷サイキックリサーチ/SPR」所長・ナルの手伝いをするはめに。彼女を待っていたのは数々の謎の現象だった。旧校舎に巣食っているのは戦没者の霊なのか、それとも――?小野不由美の出世作で、1998年より漫画化、2006年にはアニメ化もされている。悪霊シリーズとはゴーストハントのシリーズの総称を示す言葉。
「ミステリやホラーか、なんだか読めそうな気がする。私そういう小説は大好きから今度読んでみようかな。他には?」
「そう、それは良かった。……あとは、歴史物で、『彩雲国物語』(※3)とかもおすすめ。自立していく主人公の成長と女性ならではの苦悩とかが描かれているよ」
名門紅家直系長姫ながら貧乏生活を送っている主人公、紅秀麗はあることをきっかけにもう一度諦めた夢を叶えようと追い求める。架空の国、彩雲国を舞台に恋愛と夢を紡ぐ中華風ファンタジー架空歴史小説。シリーズ累計650万部を超える人気シリーズで2006年にはアニメの第1シリーズが、2007年には第2シリーズが放映された。
「女性の苦悩ね~、そういうライトノベルもあるんだ。女子の私からすると入りこみやすいところが嬉しいね」
「あと僕が知るなかだと『少年陰陽師』(※4)かなあ。これは今まで紹介した作品と違って少年が主人公だけど、女性が入りやすい作風だから読みやすいと思う」
平安時代、安部清明の末の孫、陰陽師の安部昌浩は相棒の物の怪(もっくん)とともに修行に励む。だが昌浩には『見鬼』の才がなく、まだまだ半人前であった。そんな日々の中、内裏が炎上するという騒ぎがおこり事件に巻き込まれ、昌浩の周りで奇怪なことが起き始める。13歳の少年陰陽師が挑む妖怪ファンタジー。2006年にテレビアニメ化された。
「へえ、ライトノベルって男性向きなモノだとばかりだと思っていたから意外だったよ。探せばあるもんなんだね~女性でも読めるライトノベルってさ」
「うん、まあね。探してみると意外と面白いもんだよ。機会があったら読んでみて」
「うん。あ、でも……?」
「でも?」
「もうすぐ部活動の時間だから、行ったほうがいいんじゃない?」
「え!? あ、本当だッ! やばいッ、おお、遅れる! ご、ごめんッ! 話の続きはまた今度ッ、今川さん、じゃあ、またねッ!」
「うん、じゃあね、また明日ね。バイバイ」
「あ、うん。バイバイ!」
「……ライトノベルとブンガク部か、なんだか面白そうだね」
……つづく
次回予告
「次回予告、どうも中島優斗です」
「こんにちは、今川凜子です」
「今日はありがとね、今川さん」
「うんん、私のほうもいろいろ教えてもらってありがとうね」
「こちらこそね。では、次回のブンガク!をお楽しみに!」
「またね。バイバイ~」