嫉妬で勉強に手がつかない!? 妬ましすぎる受験青春コミックが登場!

マンガ

更新日:2013/6/25

 ジメジメとした梅雨が明けると、夏到来。夏といえば、海に山に花火に祭り、あの娘の浴衣姿……なんてことを想像している場合か受験生! そう、夏は受験勉強の数ある山場のひとつ。夏を制する者は、受験を制するなんていわれるように、受験生にとっては非常に重要なシーズン。うかれている場合ではないのだ。

 そんな受験生たちに、勉強の合間の息抜きとしておすすめできるマンガが発売された。その作品の名は『サクラサク症候群』(保志レンジ/講談社)。高校受験を目前に控えたキャラクターたちが織り成す青春ストーリーだ。

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 しかし、この時点で共感を覚えるのはまだ早い。じつはこのマンガには、受験生たちを嫉妬の渦に巻き込むような描写が、数多く存在するのだ。

 主人公は、受験を控えた中学生3年生の秀才、蛇ノ目若竹。学校では友だちも作ろうとせず、医者になるという夢に向かって、黙々と勉強をする毎日を過ごしている。ここまではまだいい。そんな彼の前に現れたのは、曲がったことが大嫌いな、芯がまっすぐの超暴力少女、宮下景虎。彼女はなんと、若竹の幼なじみ。ふたりはじつに8年ぶりの再会を果たしたのである。はい、もうこの時点で、嫉妬の感情がメラメラと湧いてくるだろう。幼なじみ? しかも女の子? 自分のまわりには、そんな設定どこにも見当たらないよ、と思われた方は、少し落ち着いてほしい。話を先に進めると、景虎は若竹に、なんと、難関高校の受験の手伝い、いわゆる「勉強を教えてほしい」と頼むのだ。いやいやながらも、昔にふたりで遊んでいたことなどがフラッシュバックし、その頼みを引き受ける若竹。ここからふたりの受験を交えた物語がはじまる。

 女の子に「勉強を教えて」なんていうイベントに遭遇したことなんて、なかった、ないだろう、ないと言い切れるほどに、孤独に耐え忍んでいる受験生たちにとって、若竹のこの行動は、簡単に引き受けるなよ、そんなことで受験戦争が乗り切れるか、と思いつつも、くぅぅうらやましいという気持ちが押さえきれないほどに大きくなっていくことと思う。同感である。

 まだまだ、妬ましいイベントは続く。たとえば、図書室で、だれもが静かに読書や勉強をする図書室で、あろうことか若竹と景虎は、ふたりだけの個人レッスンを行うという描写が描かれるのだ。もうなんというか、エロいイベントしか想像できないようなシチュエーションだが、そんな思いはどこ吹く風。ふたりは、ときに騒ぎつつも、まじめに勉強に取り組む。なにより妬ましく映るのは、問題が解けるごとに無邪気に喜び、若竹に「合ってる? なあ合ってる?」とうれしそうに聞く景虎の姿。問題が解けてもひとりで答え合わせをして、合っていれば心の中で小さくガッツポーズをとるしかない、静かなひとりぼっちの戦いを続ける受験生たちにとって、この描写は酷というもの。できれば、黙々と勉強をするだけにしておいてほしかったところだが、それをやってしまうと、マンガとしては致命的におもしろくなくなるので、その思いには、そっとフタをしておこう。ほかにも、嫌がらせを受ける景虎のために、犯人探しを行う若竹の姿や、若竹の部屋に忍び込み、ノルマの問題集をぶちまけながら笑顔で寝ている若竹の上に飛び乗る景虎の姿、それぞれに「合」と「格」という文字が入ったおそろいのキーホルダーをうんれしそうに渡す景虎、といった具合に嫉妬の炎がメラメラと燃え「お前ら勉強しろよ! ちくしょう!」といってしまうようなシーンが散見する。

 しかし、じつは、景虎には好きな人がいて、その人と同じ高校に行くために若竹に勉強を教わっているのである。一方の若竹は、景虎に接するうちに彼女に対する過去の憧れに似た気持ちを思い出し、惹かれていく。だが、景虎の気持ちも理解している若竹は、複雑な気持ちを抱えることになる。といったバックグラウンドも描かれているのだ。良い子の受験生諸君、お願いだから、ここで「若竹ざまあ」などとは思わないで、純粋にふたりの行く末を案じてほしい。

 とまあ、嫉妬したり、心配になったりと、読むごとに忙しない気持ちになれる、このマンガ。あまりのめり込みすぎると、勉強が手につかなくなる恐れがあるので、ほどほどに押さえておくようにしよう。

文=オンダ ヒロ