野菜炒め、どうして塩は最後に入れるの? 料理を科学的に解明

食・料理

更新日:2013/6/26

 「肉がジューシーに仕上がらない」「野菜炒めがうまくいかない」……こんなふうに、料理にはどうしてもうまくできないことがあるもの。でも、それはあなたが料理下手だから、というわけではない。うまくいかないことには理由があるのだ。

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 先月発売された『科学者ママnickyのなるほど段ちがい! お料理ノート』(科学者ママnicky/主婦と生活社)というレシピ本は、タイトルにもある通り、著者はなんと分子生物学者。レシピの紹介だけでなく、科学者の視点から多くの人が抱えている料理のお悩みに答えているのだが、ここで失敗の「理由」を解き明かしている。

 たとえば、最初に挙げた「野菜の炒め物」の悩みも、“加熱前に塩を入れてしまう”ことに失敗の理由があるという。著者の解説はこうだ。

 「野菜の細胞は細胞壁という固い囲いに入っています。植物細胞に塩をかけると、水分が奪われますが、外の固い細胞壁は縮まずに中身だけしぼみます。なので、中身がスカスカになった細胞壁がひしゃげて、植物全体がしんなりするのです」

 レシピに「最後に味付け」と書かれていても、その理由まで触れていることはまずない。しかし、これであなたも「どうして最初に塩を振るのがダメなのか」を理解できたのではないだろうか。野菜炒めを上手につくるには、「高温で加熱してタンパク質などの熱変性をさせた後、火を止める直前に塩を振る」ことが大事なのだ。

 また、ニッチな悩みだが、多くの人がきっと疑問に思っているであろう「完璧に仕上がった麻婆豆腐を味見したら、なぜかとろみが弱くなる」という問題。「気のせいかも……」と追加で水溶き片栗粉を投入してきた人も多いと思うが、じつはこれにも理由があった。なんと、唾液に含まれるアミラーゼという消化酵素が原因だったのだ。一度口に入れて唾液が付いたスプーンを麻婆豆腐に入れてしまうと、このアミラーゼが片栗粉のでんぷんを分解し糖に変化。そのせいでスプーンに乗った麻婆豆腐のとろみが消えてしまうという。「追加で片栗粉を入れても、アミラーゼの作用があるので(元のとろみに)戻りません」とのことなので、麻婆豆腐をはじめ、とろみをつける料理のときは、取り皿に取ってから味見しよう。

 ちなみに著者は、顕微鏡や、酸性度を計るpH(ペーハー)メーター、手で触れずに温度を計れる赤外線放射温度計なども調理器具のひとつとして調理に用いているのだとか。近年ブームの塩麹漬けも、その変化を顕微鏡で見てみれば、表面がボロボロとなり、分解され柔らかくなっていることが一目瞭然。さすがに一般家庭でここまで行うことは難しいが、科学的な理由を知って納得したり、実験によって実感することが、料理上手になるための第一歩になるのは間違いなさそうだ。