10億年後には干上がる運命? 「海」の成り立ちから、地球の将来を考える!

科学

更新日:2020/8/11

 7月15日は国民の祝日「海の日」だ。国民の祝日に関する法律の第2条によると、海の日は「海の恩恵に感謝し、海洋国日本の繁栄を願う日」として、1996年7月20日から制定された祝日(2001年からはハッピーマンデー制度により7月の第3月曜日となった)とある。また7月は海の日の趣旨を広く国民に理解してもらうため「海の月間」ということになっているそうで、海に親しむためのイベントが全国各地で開催されているそうだ。海が祝日になるというのは、周りをグルっと海に囲まれた島国の日本ならではといえるだろう。

 では地球の総面積の70.8%、水分の実に97%を占めているという広大な海は、いったいどのようにして出来たのだろうか? 『海はどうしてできたのか』(藤岡換太郎/講談社)によると、46億年前に隕石が激しくぶつかりあって地球が形成された後、地上には隕石が次々と降りそそぎ、その熱で表面はドロドロに溶けた状態(表面から2000~3000キロの深さまで溶けていたそうで、現在の地球の半径6400キロから考えると、表面から約1/3~半分がドロドロ状態!)だったという。「海」を「液体で満たされたもの」として定義するならば、このドロドロの「マグマオーシャン」こそが、地球に出来た初めての「海」だったのだ。

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 さらに時代が進んで約37億年前、陸の温度が冷えたことで、想像を絶する豪雨が降り注ぎ、水がたまって「海」が出現する(今地球の表面にある海水と淡水の量がこの時に溜まったと仮定すると、1時間に100ミリという猛烈な雨が3年1ヵ月降り続く計算になるそうだ)。しかしその成分は二酸化炭素や塩酸などが溶けた、強烈な毒性を持った海だったという。そして約27億年前、光合成をするシアノバクテリアの発生によって大量の酸素が発生、それまでの海を「環境破壊」していったそうだ。その後も数々の偶然と幸運が重なり、現在の海が形成されていく過程を本書では説明していくが、その最後には恐るべき「地球の未来」が記述されている。なんと海が干上がってしまう可能性があるのだというのだ!

 プレートテクトニクスによって、水は海溝から地球の内部へと運ばれている。地球は内部のウランやトリウム、カリウムなどの放射性元素の崩壊熱で内部から暖められているのだが、半減期が45億年のウランを始め、その量は地球の誕生以来減り続けていて、現在はだんだんと冷えていっている状態なのだそうだ。地球が冷やされるとそれまで地球内部の熱で暖められ、マグマとなって地表へ戻っていた水が戻らなくなり、地下と地上の水の循環型が絶たれて、最終的には海が干上がってしまうそうなのだ。それは今から10億年後といわれているそうで、そうなると地球は火星のような状態になってしまうと考えられているそうだ。

 本書ではこれまでの地球の歴史を「1年間」と仮定し、カレンダーのようにわかりやすく解説している。その観点から行くと、人類は大晦日の午後11時37分に誕生し、現在の地球温暖化や環境破壊につながる産業革命が始まったのは午後11時59分58秒、これまでの地球の時間からするとわずか2秒間の出来事でしかないそうだ。著書の藤岡氏は、いくつもの奇跡によって誕生し、進化を遂げてきたこの星を、地球カレンダーの「最後の23分」に現れた人類が破壊してしまうことは、海が干上がってしまう地球終焉のシナリオよりもよほど恐ろしいと語っている。「海の月間」である7月、そして海へとレジャーで出かけるこの夏、海と地球環境の未来について真剣に考えてみて欲しい。

文=成田全(ナリタタモツ)