反射的な「いいね!」は禁止! 元暴走族事業家が勧める「与える人生」とは

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更新日:2013/7/12

 Facebookで気軽にコミュニケーションがとれる「いいね!」ボタン。足あと的な意味合いや共感を示したりするのに便利だし、自分の意見を述べなくてもすむから、「とりあえず押しとく」という人も多いはず。この「いいね!」を“7日間禁止!”と帯コピーで提唱しているのが、『今すぐフォロワーはやめなさい! 人生のリーダーになるために、やるべきこと、やってはいけないこと』(加藤秀視/経済界)だ。ビジネスの世界で盛んにFacebookやTwitterの有効活用がうたわれている風潮に対し、なんとも挑戦的で目をひく。

 著者の加藤秀視は、幼い頃に父から虐待を受けて施設生活を送り、10代の頃は暴走族、裏社会を渡り歩いてきた。2度の逮捕で更生を誓ったが、お金も人脈も学歴も社会経験もない。それでも建設会社を立ち上げ起業したところ、うまくいくわけがない、と批判ばかり浴びたそうだ。

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 しかし、今では複数の会社を経営する事業家として活躍し、年商100億円企業の顧問をつとめるまでになった。そんな彼のもうひとつの顔が、「元暴走族の異端人材育成家」。少年院を出入りする非行少年少女や問題を抱える親子など、これまで約1000名と直接かかわってきたという。そうした自らの経験を通して、「人生を逆転させる方法」を提唱したのが本書というわけだ。

「この世には“2種類の人生”があります。」と著書は述べる。それが「フォロワーの人生」と「リーダーの人生」。人の意見や世の中の風潮・流行に対して反射的に「いいね!」ボタンを押してしまう人が著者のいう「フォロワーの人生」であり、自分なりの考えを持って主体的にボタンを押しているのなら問題はない。考えもなく、“反射的に”というところがくせ者なのだ。

 人材育成家としての著者が指摘するのは、これまでの社会でつくりあげられてきた価値観や常識に対して、反射的に「いいね!」ボタンを押していないか? ということ。たとえば、「いい大学に進学すれば社会に出たときに有利」、「会社を辞めて独立するのは危険」、「生活のためには嫌な仕事も我慢しなければいけない」といった昔から言われ続けていることだ。

 これらはたしかにある面では事実かもしれず、一昔前までは通用した部分もあったが、一方で「思い込み」となって、人を縛っている可能性もある。また、厄介なのは、こうした価値観を支持するフォロワーは、変わろうと望む人を否定したり批判して阻害し、自分と同じようなフォロワーと生み出そうとすること。これを本書では「フォロワー量産システム」と呼んでいる。

 これに対し、自分の専門領域や仕事において、必ず他者に肯定的な影響を与えようとする人が「リーダーの人生」となる。なにもカリスマ的な起業家となって強力なリーダーシップを発揮せよ、と提唱しているわけではない。むしろ「弱い人ほどリーダーになれる」というのだ。

 ネガティブな人は、他者のネガティブな感情も敏感に感じとることができる。人の気持ちを理解し、いい影響を与えることで人を助けようと働くタイプが本書の示す「リーダー」というわけだ。

 これくらいなら、ちょっと意識を変えればできるかもしれない。

 人からの影響を「受け取ること」にしか興味を持たずにいると「フォロワーの人生」となり、自分が人に「何を与えることができるか」を常に意識して行動していると「リーダーの人生」となるというのが本書の論旨。

 受け取るばかりの人と与えるばかりの人――。受け取った人の方が得をしそうなものだが、「フォロワーの人生」は精神的にも金銭的にも時間的にも貧しい人生を送っているものだと著者はいう。

 では、与えてばかりの人はどうだろう? その人の元には、与えてくれることを望むフォロワーが集まり、感謝とともに様々な情報を残していく。それが結果的にお金となって戻ってきたりするというわけだ。この皮肉な図式こそが、著者がこれまでの人生の中で見つけた「与えること=受け取ること」という方程式。あらためてFacebookやTwitterの使い方を考えさせられる。

文=大寺 明