改憲に賛成? 反対? でもその前に……、サクッと読める“憲法本”で憲法を学ぼう

政治

更新日:2013/7/18

 今夏の参議院議員選挙でも大きな争点となっている憲法改正。各メディアでは改憲議論も白熱しているが、「ケンポウってわかりにくすぎ! っつーか全文とか読んだことないっす」という人も多いのでは?

 今、各出版社ではおカタイ憲法をかみくだいて解説する“憲法の翻訳本”ともいうべき書籍をぞくぞくとリリース中だが……本当に読みやすいの? 過去のベストセラーからニュース性満載の最新刊まで、話題の“憲法本”を実際に読んでみた!

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 まずは、1982年に刊行された『日本国憲法』(小学館)。「古ッ!」と思うことなかれ。実は、この31年間で累計92万部を発行していたが、それが先月軽装版が9万部発行され、ついに100万部を突破したのだ。現在はセブンイレブンの書棚にも並んでいる売れ筋の一冊なのだ。

 肝心の内容は、ルビ付きの憲法の全文。「共和」「恵沢」など、語句の意味が下段に記載されているが、それ以上の解説や解釈はなし……と、やや拍子抜けするシンプルさ。憲法の全文を知るには読みやすいが、制定の背景や改憲にまつわる問題を理解するにはちょっと不十分かもしれない。

 その点、憲法改正に関する話題も含めて、憲法にまつわる要素をイラストで丁寧に解説しているのが『マンガでわかる憲法入門』(伊藤真:監修/ナツメ社)。メインは文章や図を用いた解説だが、登場するキャラクターたちの“ナゼ?”を、弁護士・伊藤先生がマンガ形式で教えてくれる。

 憲法改正のための条件を記した「各議院の総議員の3分の2以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない」とする「96条」の項目では、手続きの方法や、憲法改正には限界があるとする説を紹介する。“憲法とは何か?”というそもそもの話から、国会、内閣、裁判所、地方自治などの仕組みもおさらいできるため、憲法を体系的に知りたい人にはオススメだ。

 マンガといえば、異色のコラボで目を引くのが1983年に刊行された『「日本国憲法」なのだ!』(赤塚不二夫、永井憲一/草土文化)。

 バカボンのパパと憲法というまさかのギャップにむしろ期待が高まるが、キャラクターが登場するのは、現行憲法と9条の成り立ち部分を紹介する冒頭部分のみ。あとは赤塚不二夫氏と法学博士・永井憲一氏との対談、日本国憲法の全文など、至ってマジメな内容が続く。悲惨な満州引き揚げを経験した赤塚氏が語る“マンガに込めた平和への思い”、いつも権力に反発している“ニャロメの誕生秘話”などを通して、感覚的に憲法を理解できるという点では、ほかの憲法本と大きく一線を画す内容になっている。

 最後に、最新の改憲トピックが読みたい人にオススメなのが、今年7月に出版された新書『憲法がヤバい』(白川敬裕/ディスカヴァー・トゥエンティワン)。現行憲法と自民党の改正草案を比較しながら、その意図を読み解ける作りになっている。

 たとえば、「個人の尊厳」を定めた13条が、自民党の草案では「個人として」から「人として」に変わっている。これはなぜか? 筆者は「国民の権利・自由を確保する」はずの現行憲法の本質が、草案では「国家の形成・成長を確保すること」に置き換わっていると指摘する。では、基本的人権は? 国民主権は? 戦争の放棄は? 草案の文章を見ただけではわからない、隠れた意図を読み解いていく。文章もわかりやすく、2時間もあれば読み終わるため、かけあしで自民党の改憲案を理解するにはもってこいの1冊だ。

 現行憲法の制定から66年。憲法も変えていくにせよ、問題はどう変えるかだ。改憲機運が盛り上がる今こそ、さまざまな角度から切り込む憲法本をいくつかひもとき、理解を深めてみてはいかがだろうか。

文=矢口あやは