放送間近『ラピュタ』、実は借金返済のための映画だった!

映画

公開日:2013/8/1

 いよいよ今週金曜に放送される『天空の城ラピュタ』。とはいえ、1986年に映画館で公開され、88年にテレビに登場してから、なんとこれで14回目の放送。にもかかわらず、ネット上では呪文の台詞「バルス!」のつぶやき自粛のネタツイートが拡散するなど、ラピュタ人気は年を経るごとに増しているような印象すらある。そこで今回は、もっと『ラピュタ』を楽しめる、知られざる制作秘話を、『ジブリの教科書2 天空の城ラピュタ』(スタジオジブリ:著、文春文庫:編集/文藝春秋)から紹介しよう。

 

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●ラピュタのヒミツその1 「ラピュタは借金返済の手段だった!?」
 『風の谷のナウシカ』完成後、「もう二度と監督はやらない」と宣言していたという宮崎駿。監督としてアニメーターたちに厳しいダメ出しをすることで、自分のもとをみんなが離れていく……そんな経験から「友達を失うのはもう嫌だ」と漏らしていたそう。しかし、『風の谷の~』のヒットにより、思いがけないお金が転がり込んできた。そこで、今度はこのお金をもとに『風の谷の~』でプロデューサーを務めた宮崎の先輩・高畑勲が監督として作品をつくることに。
 が、アニメのつもりで制作に動き出したものの、高畑はドキュメンタリー作品に方向転換。時間もお金もつぎ込むが、作品はなかなか完成しない。金策に困った宮崎は、現在のジブリの名プロデューサーである鈴木敏夫に相談。そして鈴木に映画をつくることを提案されたのだった。そのとき「わずか5分で」ラピュタの内容をすべて喋ったという宮崎。ちなみに高畑が手がけたドキュメンタリーは『柳川堀割物語』として、『ラピュタ』公開の1年後にようやく完成した。

●ラピュタのヒミツその2 「タイトル誕生の裏に“版権切れ”」
 このようないきさつで企画が動き出した『ラピュタ』。企画書で宮崎によってつけられたタイトルは、「少年パズー・飛行石の謎」、続いて「あるいは空中城の虜/あるいは空とぶ宝島/あるいは飛行帝国」とあったそう。空中に浮く島・ラピュタの名前は『ガリヴァー旅行記』からとられており、この本を宮崎は中学時代に読んだという。作品のモチーフにするほどだから、さぞかしお気に入りの作品なのだろう……と思いきや、宮崎いわく「全然おもしろくなかった」。ラピュタという名前を使ったのも、「版権も切れてるし、そのままいただいちゃった」という。発想のもとにはなったが、思い入れはあまりなさそうだ。

●ラピュタのヒミツその3 「なぜ浮くの? そんな理屈はどうでもいい!」
 『ラピュタ』を観たことがある人の中には、「シータは家族をなくしてから一人でどうやって暮らしてきたの?」と疑問に思う人もいるかもしれない。この疑問に、宮崎は「シータの家の暖炉に隠された飛行石のおかげで、シータの畑がよく実ったからです(笑)」と答えている。なんともやけっぱちな回答だが、「そんなこといっても仕方ないでしょう。いったとたん、つまらなくなる。理由づけっていうのは、しょせんでっちあげにすぎないから(後略)」ということらしい。
 もちろん、島が空中に浮いている理由も、「なんで浮いているかといったって、浮いてるんですから(笑)」。ラピュタ語の意味も「何もないです。口から出まかせです」とのこと。理屈抜きに楽しむ、これが大事なようだ。

 このほかにも本書は、「バルス!」の台詞がなかなかうまくいかなかったという貴重なアフレコ時のレポートから、森絵都や石田衣良、上橋菜穗子、荒俣宏といった作家たちによる寄稿など、コンテンツ満載の豪華な内容。放送日が待ちきれない人は、この本でラピュタ欲を盛り上げてみてはいかがだろうか。