『あいまいみー』『WORKING!!』…4コマ大好き芸人・天津の向が選ぶ、究極の4コママンガとは?

マンガ

更新日:2013/8/12

 2011年に人気バラエティー番組『人志松本の○○な話』で溢れる4コマ愛を語り、一躍4コマ大好き芸人として知られることになったお笑いコンビ天津の向清太朗。毎月7000本以上の4コマを読むという彼は、ただ読むだけでは飽き足らず、実際に4コマの原作を手掛けるほど。さらに、阿佐ヶ谷ロフトAでは4コマ作家をゲストに迎え「天津向の4コマトーク」というイベントまで開催している。そんな向が、100を超える4コマ作品のレビューを書き、責任編集をつとめることにもなった『天津・向の この4コマがオモロイ! 2013』(天津・向清太朗/竹書房)が8月1日に発売された。そこで、この中から向オススメの4コママンガを見てみよう。

 まずは、「人志松本の○○な話」でも紹介し、向が「未来の4コマ」と称した『あいまいみー』(ちょぼらうにょぽみ/竹書房)。そもそも、4コママンガは起承転結で終わるものが王道だった。しかし、時代の流れとともにそれを打ち壊そうと、一見オチていなかったり、話のネタ自体がわかりづらかったりする不条理4コマが、さらにそこから、起承転結にもオチにもこだわらない萌え4コマが生まれた。そんな型や常識にとらわれない作品の中で、向が「今最も異彩を放っている」と言うのが、この『あいまいみー』だ。ケンカした弟が「お餅になった」とか、話の展開がとにかく独創的過ぎて、向も「僕すらお手上げです」と言ってしまうほど。それでも、向がいろんなところで「この漫画が凄いぞ!」とオススメしたり、読者をひきつけるだけの魅力がある。4コママンガについて「狭い世界なんて思ってほしくない。あの4つのコマの中には宇宙だって入ってるんだ!」と熱く語る向。たしかに、4コママンガはコマ割りも決まっているしページ数もそんなに多くない。でも、その限られたページの中だからこそ、いろんな試みが行われている。向に、そんな4コマの新しい楽しみ方や魅力を教えてくれたのがこの『あいまいみー』なのだろう。

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 また、ひとつの作品で何通りもの楽しみ方ができる作品として『WORKING!!』(高津カリノ/スクウェア・エニックス)をあげている。これは、あるファミレスを舞台にしているのだが、それぞれの登場人物の目線に立つだけで違った見方ができるのだ。たとえば、主人公の少年・小鳥遊の目線ならとてもかわいい先輩が出てくる「シンプルな萌え4コマ」。そのかわいい先輩である女子高生・種島から見ると、毎日ドタバタで自分はいじられたりする「コメディ感が強い4コマ」。小鳥遊に片思いしている伊波の視点だと、男性恐怖症に対してどうやって向き合うのか。そして、それを好きな人は許してくれるのかと悩む「健気なラブコメ4コマ」になる。こんな楽しみ方ができるのも、「キャラが1人1人立っていて、見事に消化しきっている」からなんだそう。

 そして、「職業柄、4コマを読むときはどんなツッコみをするのかものすごく気になる」という向が絶賛していたのが、『ポイズンガール』(瀬野反人/竹書房)。毒舌体質の主人公が登場するのだが、その「毒のバランス」がすごくいいそう。それに、「登場キャラクターが一緒だと、ツッコむ事って変わらないから、ワードのチョイスも展開もものすごく難し」くなる。その大変さを見せないところも、作者のすごいところなんだとか。他にも、センスのある間とツッコミの言葉選びがクセになり、「正直芸人として、そのスタイルすごく真似したくなります」と言っていた『はるみねーしょん』(大沖/芳文社)。15才でデビューした作者の色あせない名作で、「今も僕のお笑いの礎になってる作品」と言う『へそで茶をわかす』(茶畑るり/集英社)。これらの作品を読めば、向のお笑い観まで共有できるかも?

 4コママンガなんて単調だと思っていた人もいるかもしれないが、たった4コマしかないからこそムダがなく、その分作者たちはストーリーや演出方法に工夫を凝らす。実は、4コママンガとはとってもバリエーション豊富で、奥が深いものなのだ。

文=小里樹