タモリも大好き! 山と谷が入り組んだ街、東京の「地形」を楽しむ

暮らし

公開日:2013/8/18

 日本坂道学会副会長であるタモリの『新訂版 タモリのTOKYO坂道美学入門』(タモリ/講談社)によると、「良い坂」とは「勾配が急である」「湾曲している」「まわりに江戸の風情がある」「名前にいわれがある」の4つの条件を満たすものだそうだ。そのタモリは初めて上京した際、あまりにも街中に坂が多くてビックリしたそうだが、とにかく東京には坂が多い。名古屋や大阪、京都など大都市と呼ばれる地域は平坦だが、東京には断崖といっていいほどの高低差があちこちにある。

 その「土地の凸凹」は、タモリがホストを務める『ブラタモリ』や『タモリ倶楽部』などの番組でも取り上げられたこともあってか、今静かなブームとなっているようで、様々な本が出ている。『地図と愉しむ東京歴史散歩』『地図と愉しむ東京歴史散歩 都心の謎篇』に続く第3弾となる『地図と愉しむ東京歴史散歩 地形篇』(竹内正浩/中央公論新社)、『東京凸凹地形案内』に続く第2弾となる『東京凸凹地形案内2』(今尾恵介/平凡社)、『凸凹を楽しむ 東京「スリバチ」地形散歩』(皆川典久/洋泉社)などがあり、これら以外にも、階段に着目したもの、3Dメガネで地図の高低差を楽しむもの、江戸の坂と今を比べるものなど、東京の高低差については多種多様な本がある。

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 ではまず『地図と愉しむ東京歴史散歩 地形篇』から見ていこう。この本は2部構成になっていて、第1部は「東京の不思議な地形を歩く」として、東京を形成する様々な地形を紹介している。川や水と土地の起伏に関する歴史、鉄道敷設と地形の深い関係、大久保や吉祥寺など細長い区画が続く「短冊地」が出来た謎、なぜ商店街は谷で発達したのかなど、普段何気なく通っている場所も違って見えてくるであろう内容が満載だ。そして第2部では「東京お屋敷山物語」と題し、明治以降急速に発達した「山の手」を紹介している。江戸時代まで水は低い場所にしかなかったが、明治に入って水道が普及すると、高い場所でも水が使えるようになり、お金持ちたちは、こぞって見晴らしのいい高台に豪邸を建てた。元老や皇族、華族、そして新興の金持ちなどがどのように山の上に移動していったのか、そしてどんな家を建てたのかなど、歴史に興味のある人にピッタリの内容だ。

 そして『東京凸凹地形案内2』は、前回よりも範囲を広げ、都心だけではなく武蔵野・多摩エリア、さらには神奈川県の横浜、横須賀、鎌倉、千葉県の下総台地、名古屋、大阪エリアまでを網羅。土地の凸凹を楽しめるような散歩ルートが紹介され、詳細な解説と豊富な写真が掲載されているので、本書を片手に楽しみながら街歩きができる。また地図の聖地ともいえる「国土地理院」に潜入してディープな地図作りについての取材をしたり、東京メトロ丸ノ内線の高低差を紹介するなど、より凸凹好きな地形マニア向けの内容となっている。

 『凸凹を楽しむ 東京「スリバチ」地形散歩』は、窪地状の地形を「スリバチ」と名づけ、エリア3D地形図(スリバ地図と呼ぶそうだ)でどこに「スリバチ」があるのか、そしてどのくらい深いのかの断面模式図や断面展開図によってレベルを分けている。ちなみに「三級スリバチ」は二方向、「二級」は三方向、そして「一級」は四方向を坂に囲まれた場所を意味していて、JR信濃町駅から四谷に向かう途中にある千日谷や四谷荒木町の窪地、東京大学の三四郎池、駒場公園近くの溝が谷、幡が谷駅近くの地蔵窪、大久保の窪地、成増駅北の百々向川の谷などが紹介されている。

 『地図と愉しむ東京歴史散歩 地形篇』の著者の竹内氏は、人間は上り坂より下り坂を好み、上り坂はあたかも人の立ち入りを拒む壁のようだと書いているが、本書を参考に凸凹を歩いて壁を越え、昔の人々の暮らしに思いを馳せてみてはどうだろうか。

文=成田全(ナリタタモツ)