キラキラだって気にしない? 子供の名前は音で決めろ!

出産・子育て

更新日:2014/1/29

 「空詩」「龍飛伊」「虹」。あなたはこれらの名前をサラリと読むことができるだろうか。

 頭から順に、「らら」「るふい」「しえる」と読む。元オセロ・松嶋尚美が自身のブログで長女の名前、空詩(らら)を報告したところ、「まったく読めない」とネット上で話題になった。有名人の子供のみならず、人気漫画の主人公の名前や好きなバンド名をもじった名前など、キラキラネーム(個性的だが読むのは難解な名前という意味のネット上のスラング。別名DQNネーム)の勢いは留まるところを知らない。明治安田生命による「生まれ年別の名前調査」でも、 飛緯朗(ひいろう)、実新(みにい)、朱香(あろま)など難解な名前が続々登場しており、折しも静岡県の小児救急で働く男性医師が「キラキラネームは救急隊から名前の表記を説明される際に時間がかかるため、患者取り違えの危険性が増す」とTwitterを通じて警鐘を鳴らしている。

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 命名にまつわる騒動は海外でも報告があり、先日はアメリカ・テネシー州でも「メシア」と名付けられた男児に対して、同州の判事が「メシア(救世主)はキリストにのみ許された称号である」として名前の変更を命じたり、増え続ける奇妙な命名を抑制するためにドイツ当局が「インベーダー」「ウイスキー」などの命名の拒否リストを発表したり、かと思えばスウェーデンでは「メタリカ」や「スーパーマン」などの命名が却下されたとのこと。今や「キラキラネーム問題」は、世界共通の現象となっているようだ。

 では、日本ではいつごろから、なぜ、キラキラネームが名付けられるようになったのか。『名づけの世相史「個性的な名前」をフィールドワーク』(小林康正/風響社)によれば、「読めない名前」が世間で注目を集めメディアに取り上げられたのは、2000年前後だという。朝日新聞が家庭欄に「命名狂想曲」という連載(1999年)を組み、「読めない名前」の実態報告とそれに関わる人々の声が紹介され、問題視する教師や医師と、それに抗弁する親たちの丁々発止のバトルが展開された。紙上で語られた内容から推測すると、現代の親たちが“珍しい名前”を名付ける動機は“個性”という一語に集約されるようだ。「個性を伸ばす教育をする時代において、個性的な名前は歓迎されるべきである」と。

 一方で、10万件を越える名付け相談の専門家である『子供の名前が危ない』(牧野恭仁雄/ベストセラーズ)の著者によれば、子供に珍奇なキラキラネームをつけたがる人たちには、「自分自身は“カッコいい”生き方ができていない」「こうありたい自分でいられない」という欠乏感を抱える人が多く、キラキラネームはこうした人々の無力感や疎外感の広がりをはかるバロメーターであると述べられている。親の深層心理が現れた“個性的”な名前を付けられたことで、人から笑われたりあだなをつけられ、悩む人が多く存在する実態にも触れている。

 これほどに大切である、人の名前。『世界で通用する子供の名前は「音」で決まる』(宮沢みち/講談社)では、1日に何度も呼ばれる名前の音の響きがその人の“人生”を決めるとされている。運命学研究家である著者によれば、口から何気なく発している音にはそれぞれ異なる波動があり、それが肉体を通じて魂まで響く。いわゆる言霊がある。そのため同じ名前を呼ばれ続けるうちに体と名前の波動が調和し、その人の“今”をつくりあげるのだという。たとえば「文子」という表記の場合、「あやこ」と呼ばれれば経済的に安定するタイプ、「ふみこ」ならコミュニケーション力にたけるタイプと、読み方ひとつで性質が大きく変わっていくのだとか。

 さらに本書では、国際化時代にあって、将来子どもがどこの国に行っても困らないようにと、世界を意識した名付け方も提案している。海外に通用する名前としては「エリ(Elly)」や「リサ(Lissa)」など音が欧米風の名がその一例だという。日本風の名前でも「じゅん(June)」や「はな(Hana)」、「大河(たいが)(Tiger)」など、英語の綴りがある名前であれば、どこの国の人にもすぐに覚えてもらいやすいとのこと。

 ちなみに、セカンドネーム(愛称)で新しい自分をつくることも可能だそうだ。その際のポイントは“音から名前を考える”。音の響きが、自分に心地よいと感じられる名前を選ぶことが重要であるとのこと。今、ちょっとツキがないと感じている人や、新しい自分を開拓したいと考えている人は、自分が名前負けしてしまいそうなキラキラネームにならない程度に、試してみてはいかがだろうか。

文=タニハタマユミ