「コックリさん」「カー消し」…、70年代の遊びが素朴すぎる

暮らし

公開日:2013/8/27

 アイドルの心得やコーディネート提案をしてくれる「アイカツフォン」に、赤外線ヘリコプターの「ナノファルコン」など、どんどんと進化する子ども向けオモチャ。当然のことながら、子どもたちの遊びも時代とともに変化しているのだ。

 そのことを痛感させられるのが、先日発売された『子どもの遊び黄金時代 70年代の外遊び・家遊び・教室遊び』(初見健一/光文社)という1冊。外で元気に駆け回って遊んでいた昭和が色濃い世代とも、80年代の「オタクでデジタルでインドア派」とも違う“すき間世代”である70年代の子どもの遊びにスポットをあてた本書には、日本が忘れた、いや当事者世代も忘れてしまったであろう“無邪気さ”が満載なのだ。

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 たとえば、「ブームになった教室遊び」として紹介されているものに「下敷き静電気」という遊びがある。お察しの通り、下敷きを頭にのせて、ただひたすらに擦りつけるだけ。下敷きを頭から離すと……見ろよ髪が逆立ってるよ! すごいだろ! と自慢する。これが「遊び」にカウントされてしまう時代だったのだ。

 また、みんなの憧れ・スーパーカーも、当時流行ったおもちゃのひとつ。スーパーカーといっても、きれいに塗装されたミニカーではなく、単に車のかたちをした消しゴムである。その車体の後方にノック式ボールペンをあて、ボールペンを「1回ずつ弾いて」は、その滑走距離を競い合うのだ。涙ぐましいほどに地道な遊びではないか。

 しかし、子どもたちが夢中になったのは、このボールペンレースそのものよりも、「事前のチューンナップ」だったそう。車体の裏にホッチキスを刺したりセロテープを貼るなどして摩擦係数を減らすのはもちろん、一晩シンナーに漬け込んで消しゴムを硬くさせる“シンナー漬け”なる荒ワザも駆使。その情熱を傾ける心はすばらしいが、親ならちょっと心配になる危ない技である。

 そんな消しゴム遊びに夢中の男子たちを尻目に、一方で女子たちの定番は「ハンカチ遊び」だった。ハンカチを折りたたんでバナナをつくるのはテッパンとして、人気だったのはリボンだ。このリボン、目にあてればメガネになり(といっても布で前が見えないが)、胸につければブラジャーに大変身。この3段変化の最後に「ブラジャー!」とオチをつけるのが女子流ギャグで、男子を狼狽させていたそう。まさに「無邪気な低学年女子にしかできない捨て身のギャグ」だ。

 また、興味深いのは、「ちょっぴりオカルト」な遊びが流行っていたこと。心霊写真やUFOブームが起こった70年代は、その人気が教室にも飛び火。心霊系のオカルト文化をリードしていたのは“占い好き”の女子だったらしく、「コックリさん」を召喚して十円玉に乗り移ってもらったり、コックリさんを恋愛仕様にアレンジした「キューピットさん」を編み出したりと、日々オカルト活動に大忙し。近年のスピリチュアルブームを牽引するのがこの世代であることを考えると、その原点は小学校時代のコックリさん体験にあるのかもしれない。

 このほかにも、「恐怖の味噌汁」というダジャレ怪談(オチは「今日、麩の味噌汁よ」という脱力系小咄)が流行ったり、ブロック塀を見つけると歌を口ずさみながら「へのへのもへじ」やら「まるかいてブタ」(ユーモラスなブタの絵)を落書きするなど、本書を読むと当時の子どもたちがいかに素朴だったかがよくわかる。もし、あなたに40〜50代の上司がいたら、ストローで吹き矢の真似をしたり、ストローの袋を縮めて水をふりかけ「ヘビです!」とパフォーマンスして見せよう。きっと彼・彼女らは童心に戻り、大いに喜ぶこと請け合いである(たぶん)。