リアリティはあのMMRを超えた? 都市伝説の真偽を検証するマンガが話題に

マンガ

更新日:2020/8/14

 メディアで触れられる事間なく嘘か本当かもわからないまま、人々の間にひそかに広まっている怪しい噂や都市伝説。その真偽に迫り、ナゾを解明しようとするマンガが登場した。先月、発売された『【閲覧注異】』(阿鬼乱太:著、DAY WALKER:イラスト/秋田書店)がそれだ。このマンガ、『ヤングチャンピオン』(秋田書店)で連載されているのだが、主人公はキドコロという同誌の編集者。彼が編集部の仲間たちとともに読者からの恐怖体験投稿を取材調査し、都市伝説のナゾを解き明かしていく。

 と、ここまで読んで、何か気づいたことはないだろうか。そう、90年代に大人気を博したあの『MMR』(石垣ゆうき/講談社)と設定がそっくりなのだ。しかも、『MMR』がキバヤシならこちらはキドコロと、主人公の名前まで似せている徹底ぶり。

advertisement

 でも、『MMR』といえば、昨年、講談社のwebサイトで連載を再開したばかりじゃなかったか。本家の復活直後に同じような手法のマンガを始めるとは、『ヤングチャンピオン』もなかなかの度胸だが、しかし、この『【閲覧注異】』、リアリティという点では、『MMR』以上かもしれない。

 というのも、『【閲覧注異】』は「完全実話の真相をレポート」というフレコミで、実際に投稿者やその関係者に取材する形をとっており、時には証拠写真まで掲載しているからだ。

 たとえば、その一例が、代表的な都市伝説のひとつ「がんぼう岩カレンダー」を追った回。これは、某信用金庫が作成したカレンダーで、北海道遠軽町に実在する瞰望岩(がんぼういわ)の写真を掲載。それを取引先に配ったところ「昼間なのに、瞰望岩が夕焼けに染まったように真っ赤」「人の顔や人骨の形をしたものが壁面に数えきれないほど見つかる」などの苦情が相次ぎ、慌てて回収に乗り出したというもの。

 ネットでは「見たことあるけど、どこで見たことあるか思い出せない」や「絶対にあるはずだけど、自分は持ってない」といった意見が続々と寄せられたものの、確かな情報はないままとなっている。

 ところが、『【閲覧注異】』はその「がんぼう岩カレンダー」を所有しているという投稿者に取材。なんとカレンダーの現物写真を入手掲載して、それがなんの変哲もない普通のカレンダーであることを明らかにするのだ。そのうえで、噂がどうつくられたかを検証していく。

 一方、「くねくね」という都市伝説をテーマにした回では逆に、背筋が凍り付くような事実が明らかにされる。くねくねというのは、文字通り体をくねらせて動く正体不明の生き物で、ネットを中心に目撃すると精神に異常をきたすという噂が広まっているのだが、キドコロらは行方不明になったある女性がこのくねくねに遭遇した可能性があることをつきとめる。そして、行方不明になる直前の彼女の写真を掲載しているのだが、そこにはまさに正体不明としかいいようのないナゾの物体が……。

 他にも、有名なファンタのゴールデンアップルでは、製造元が正式に存在を否定している古い空き瓶をもつ投稿者があらわれたり、発売されなかったゲームソフトに驚愕の裏メッセージが隠されている事を暴いたりと、とにかくこの『【閲覧注異】』はすべてのエピソードが真に迫っていて、読んでいるとリアルな恐怖が襲ってくるのだ。

 もっとも、この作品、リアリティはあるが、フレコミどおりほんとうに「完全実話」「ドキュメント」かというと、そこはかなりあやしい。とくに、先にあげたゲームソフトの裏メッセージや、表紙にもなっている赤いランドセルのエピソードなどはあまりにできすぎていて、フィクションのにおいがぷんぷんするのだ。より恐怖を煽るためにドキュメントとフィクションの境界を曖昧にしているのだろうが、今後のことを考えるとこの綱渡りがいつまで続くのかとちょっと心配になってくる。

 そういえば、あの『MMR』も当初は「この物語は事実をもとにしたフィクションです」とリアリティをあおっていた。しかし、ノストラダムスの大予言にいれこみすぎた結果、いつのまにか但し書きに「内容に関する問い合わせは、電話では一切受け付けておりません。ご了承下さい」といった文言が追加され、内容に疑問を感じた読者の問い合わせを一切拒否したということがあった。

 『【閲覧注異】』もそんなことにはならないよう、くれぐれもやりすぎに「注異」してほしいものである。