「ぴんとこな」より萌える! と話題の歌舞伎ラノベ

マンガ

更新日:2013/9/12

 現在ドラマ放送中の『ぴんとこな』。歌舞伎界を舞台にしたこの作品には、Kis-My-Ft2の玉森裕太や中山優馬など、次期エースとも言われるジャニーズの注目株が起用されたものの、視聴率はいまいち伸び悩んでいるよう。しかし、そんな『ぴんとこな』(嶋木あこ/小学館)よりも萌えると話題になっている作品があるのだ。それが、8月24日に発売された『カブキブ!』(角川書店)。歌舞伎大好きな高校生の来栖黒悟(通称・クロ)が、歌舞伎部を作るために奮闘するという物語だ。作者の榎田ユウリは、もともと榎田尤利名義でBL作品を書いている作家で、その緻密な心理描写には定評がある。どんどん作品に引き込まれて共感させられてしまうので、登場するキャラクターたちは大人のアラフォー読者まで虜にしているほど。そんな彼女が手がけた作品だからこそ、腐女子だけじゃなく普通の女の子が読んでも萌える歌舞伎男子たちがたくさん登場するのだ。

 まず、祖父の影響で歌舞伎にハマったクロ。小柄でぱちくりとした目の童顔な彼は、思い立ったら即行動してしまう男の子だ。部員集めに奔走する姿が子犬っぽいからと、先輩からポチとあだ名をつけられてしまうほど。しかし、そんなかわいらしさとは一転して、同好会の発足を許可してもらうため、職員室で『弁天小僧』の見事な台詞回しを披露したりもする。さらに、下校中も花壇の煉瓦に足を乗せて『三人吉三』という演目を1人でやりだし、最後の決めゼリフも現代風にアレンジして「こいつぁ春からァ、超ラッキー!」とニヤリと笑うのだ。そんなかっこよさとかわいらしさをかね備えたところも、女子を魅了するはず。

advertisement

 また、「一八○あるんじゃないのか」というほど大きな体で、毎日顔に青アザを作っているような先輩・丹羽花満にも意外な萌えポイントがある。それは、オネエキャラだということ。母親が日舞の師匠ということもあり、幼い頃から日舞の稽古をしていた彼。でも、好きな女の子にフラれたショックから強い男になろうと無理していただけで、実際はクロに「照れなくていいのよぉ。もー小さくてかわいー」とオネエ言葉で話しかけたり「僕、女舞が好きなのに!」。「もっと上手になりたいのに、身体ばっかどんどんごつくなっちゃって……!」と泣きながら抱きついてくるようなキャラだったのだ。オネエキャラが萌え…? と疑問に思った人もいるかもしれないが、見た目のゴツさと所作の美しさとのギャップには、惹きつけられるものがある。かっこよくてキレイなうえ、共感できるところも多いオネエキャラは、腐女子心をおおいにくすぐることだろう。

 しかし、やはりいちばんの萌えキャラは歌舞伎業界の血を引く阿久津新だろう。歌舞伎業界の血を引くといっても愛人の息子で、音痴なのにバンド活動に明け暮れている彼。初めてカブキ部の勧誘に行ったときも「ぜんっぜん面白くないね!あんなのひたすら眠たいね!」。「バッカじゃねーの、おまえ?なにが悲しくて高校生が歌舞伎しなきゃなんねえの?」「なんの罰ゲームだよそれ」と拒絶しまくり。でも、同好会発足のときはどこからともなく現れて茶々を入れたり、練習中もこっそり覗きに来る。そのくせ、「阿久津、もしかして歌舞伎同好会に入りた……」と言われると、かぶせ気味に「入りたいわけないだろ!」と返すのだ。歌舞伎が好きなくせに素直になれない彼のツンデレっぷりを見ていると、どうしても気になってしまう。それに、ただのヘタレではなく最後の最後に決めてくれるところを見せられたら、もう彼から目が離せなくなる。

 ほかにも、クロが歌舞伎部を作りたいと言ったら「やっちゃえ」と後押しし「裏方も必要だろ」と言って協力してくれた親友のトンボ。3歳の頃から稽古を積んできた本物の梨園の御曹司・蛯原。歌舞伎のことなどサッパリだったのに、1度見ただけでハマってしまった顧問の遠見先生など、たくさんの魅力的な男子が登場する。何より、それぞれに歌舞伎が好きでたまらない彼ら。ひとりひとりでも十分に萌える彼らが、歌舞伎というひとつの目標に向かって絡み合ってゆくのだから、ますます萌え度は高まってゆくだろう。ドラマ『ぴんとこな』にはピンとこなかったという女子も、この『カブキブ!』には思いっきり萌えられるのではないだろうか。

文=小里樹