テレビ屋にしてベストセラー作家、百田尚樹が「売れる」を語る

文芸・カルチャー

更新日:2017/11/23

 著作が続々と映像化され、いまや誰もが知るベストセラー作家となった百田尚樹。しかし彼は、ひたすら文学を追求し続けてきた孤高の作家では決してない。テレビマンとして、“人にウケる”ことを考え続け、ひた走ってきた彼が、構成作家という身体能力を生かして文学として昇華したのが百田文学である。テレビ界を共に歩んできた仲間たちが語る、構成作家、百田尚樹の素顔とは? 『ダ・ヴィンチ』10月号では、百田のテレビ代表作『探偵!ナイトスクープ』のスタッフにその素顔を直撃。それとともに、作家としてではなく構成作家としての百田氏へインタビューを行っている。

――百田作品は最初の1ページからラストまで圧倒的な筆力で読者を引きずり回す力がある。その手法はどういう思想に由来しているのだろう。

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「テレビは最初のシーンですべての状況を理解させられる。小説だって同じです。最初のページでどう状況を視覚化させるかということを、相当慎重に書き込んでいきます。テレビ用語に“つかみ”っていう言葉があるんですが、最初の1、2分で番組を見てもらえるかどうかが決まる。その経験からかもしれませんが、僕は最初の1ページで読者をがっちりと掴まないと気が済まないのです。そして途中の中だるみな部分はすべて排除していく。省けない説明的な表現をどう短く飽きさせずに見せるか? というのがテレビ屋の工夫。だから小説でも特に長編に関しては、そういう工夫を含めた総合的な構成力が最も重要だと思っています」

 では“売れる作家”となった百田にとって、テレビ番組の現場とはどういう場となっているのかを訊いてみた。

「『探偵! ナイトスクープ』に関わっているだけで、ものすごく刺激を受けるんです。センスも才能も最高のスタッフが揃っています。日本一の番組だと思っています。僕にとっては帰る場所ですね。視聴者という市井の人々の想いの凄みが、ものすごく面白いんです」

 最後に、テレビ屋であり作家である百田にとって「売れる」とはどういうことなのか?

「テレビでいえば、視聴率の高い番組が面白いとは限らない。だけど面白い番組の視聴率は必ず上がっていくんです。実は本だってそうだと思っています。売れている作品が面白いとは限らないけれど、面白い本はどんどん売れていく。そういう法則のテレビの世界で生きてきましたから、そこは身に染みて感じていることですね」

 特集ではそんな百田の書き下ろす新作小説も掲載。また、小説家としての百田尚樹の素顔と背景についてもロングインタビューで探っている。

取材・文=石原 卓

(『ダ・ヴィンチ』10月号「百田尚樹」特集より)